教育委員会対象セミナーは11月4、5日、札幌市内で開催。2日間で教育委員会と教員が200人以上参集した。当日の講演内容の一部を紹介する。
11月4日に開催した教育委員会対象セミナーで、北海道教育庁ICT教育推進局ICT教育推進課の佐藤公敏ICT教育指導係長は、北海道の学校におけるICT活用の推進について報告した。
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■日常的に利用できる力を育む
今の子供たちが将来迎える社会は、端末やネットワーク、クラウドサービスが一体化し、日常的に利用する社会になるであろう。学習指導要領では、このような社会で子供たちが身につけなければならない資質・能力として、「学びに向かう力、人間性等」「実際の社会や生活で生き抜く知識・技能」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力」を挙げている。
3つの資質・能力を育むために大切なことは、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげることである。
個別最適な学びには指導の個別化と学習の個性化の2つがある。
指導の個別化とは、子供の特性・学習進度・学習到達度等に応じて、教員は必要に応じて重点的な指導や指導方法・教材を工夫し、一定の目標をすべての子供が達成することを目指し、異なる方法で学習を進めることである。
学習の個性化は、子供の興味・関心・キャリア形成の方向性に応じ、教員は子供1人ひとりに応じた学習活動や課題に取り組む機会を提供して、それぞれ異なる目標に向かって学習を深め、広げることである。
協働的な学びは、子供1人ひとりの良い点や可能性を生かし、子供同士や地域の人たちなど、多様な他者と協働することで異なる考えに触れる機会を作り、より良い学びを生み出すことである。
このような学習を実現するには、ICT活用は必要不可欠なものと考えている。
北海道では10年前からICTを活用した授業を行ってきた。当時は、一斉授業において教員が電子黒板やビデオカメラ、実物投影機などのICTを活用することが前提としていた。
1人1台端末と高速ネットワーク環境が実現した現在では、子供たち1人ひとりの反応や理解度を踏まえたICT活用が可能だ。個別最適な学びの実現として、個々の学習状況に応じた個別学習が可能になる。協働学習も、1人ひとりの考えを、お互いリアルタイムで共有し、双方向の多様な意見交換が可能になった。
これからはICTを教員が使用するのではなく、子供たちが主体となって活用し、学習を進めることが重要である。
1人1台端末の環境では、主にクラウドサービスに接続して活用することが前提になる。そこで学校には「文章・プレゼンテーション・表計算作成」「オンラインによる同時編集機能」「リアルタイム集計機能」「教材等の配付と課題等集約機能」の4つの機能の活用を進めている。これらはアップルやグーグル、マイクロソフトいずれのОSでも提供されており、どの教科・科目でも活用できる。
文章・プレゼンテーション・表計算機能は、レポートや発表資料の作成、データの整理など、児童生徒の「主体的な学び」をサポートできる。また、オンラインによる同時編集機能を使うことで、複数人で同時に同じファイルを編集でき、協働的な学びの実現が期待できる。教材等の配付と課題集約機能は、オンライン上で資料の配付や課題の集約、データの管理もクラスごとにできる。リアルタイム集計機能では、確認テストやアンケートなどを作成し、子供たちの学習状況を正確に把握することができる。
学校におけるICT活用が広がるよう、北海道教育委員会では、ポータルサイトを立ち上げている。ICTを活用した授業指針や、授業のイメージ動画や資料などを掲載している。
短時間で研修できる動画「みんなで研修」「いつでも研修」も作成した。
また広報誌「GIGAワールド通信」を作成し、道内の各自治体のICT・教育DX化に取り組んだ事例を紹介し、道内での普及拡大を進めている。
ポータルサイトだけでは解決できない問題のため、相談窓口を設けた。道立学校、市町村学校を対象にICT活用サポートデスクと、道立学校を対象にGIGAトラブル相談センターにおいて、電話やメールで相談やトラブルなどの対応を行っている。今後も道内のICT活用がますます普及するよう、ポータルサイトの充実を図っていきたい。
【第91回教育委員会対象セミナー・札幌:2022年11月4日・5日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年12月5日号掲載