教育委員会対象セミナーは11月4、5日、札幌市内で開催。2日間で教育委員会と教員が200人以上参集した。当日の講演内容の一部を紹介する。
1人1台端末を活かした、「情報Ⅰ」の指導について、北海道札幌北高等学校の前田健太朗教諭が報告した。
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北海道札幌北高等学校は1902年に開校し、今年で創立120年を迎える進学校だ。校内ネットワークは普通教室にはWi-Fiアクセスポイントを固定設置。一部の特別教室や体育館には可搬式で校舎内の大部分でインターネットに接続できる。通信速度は現状、上限400Mbps。来年3月にはネットの速度が最大1Gbpsになる予定だ。
GoogleWorkspaceを道教委で導入していることから端末はChromebookとし、BYODにより1人1台端末を活用しているが、今年度、一部の生徒があまり端末を持ち帰っていなかった。その理由として多かったのはカバンが重くなる、充電を毎日しなくても問題ない等の声があった。そこで、次年度入学生には、デタッチャブル型の端末を導入し、キーボードは学校のロッカーに保管することも可能とし、持ち帰る荷物の重さを少しでも軽くしたいと考えている。
学校で斡旋している端末には3年間の手厚い保証をつけている。
端末を斡旋販売しているが強制ではない。仕様書に該当するものであればどのOSでも良いこととしている。
2・3年生については端末を所持していないため、学校所持の端末(Chromebook)80台を貸し出したり、個人のスマートフォンを授業に利用したりしている。
本校では65分授業としている。「情報Ⅰ」が今年度から始まったが、昨年度から「情報デザイン」や「データ分析」等に取り組んでいる。座学に偏らないように発表や制作の時間を意図して設けた。
PC室はWindowsOSで、学校所持の端末はChromeOSのため、授業ではどちらの端末を使っても良いこととしている。ただしデータベースの学習はWindowsOSの方がやりやすいだろう。
今年度の授業を紹介する。
第1章「情報社会の問題解決」では、ネットトラブルやサイバー犯罪がなぜ起こるのかについて、グループによる問題解決型で行った。Googlejamboardを使ってロジックツリーで原因を探し、解決策を複数考え、どれが良いかを考えてGoogleスライドにまとめ、発表。Googleフォームで相互評価した。評価はスライド発表を思考力・判断力・表現力として、単元の振り返りを主体的に学習に取り組む態度として行った。Googleツール等の扱いは中学校で既に身についており、指導が不要であった。
第2章「コミュニケーションと情報デザイン」の「デジタル化」では、「文字化け」が起きる原因と解決法から文字コード体系が複数あることやユニコードの普及について触れた。音や画像のデジタル化についても、例えば波形と音の3要素の関係を示して仕組みやデータ量の計算について触れた。さらに、データ圧縮の仕組みについても触れて圧縮後のデータ量を求めている。
「情報デザイン」では、抽象化やユニバーサルデザイン、色の持つイメージなどを学び、オリジナルのピクトグラムを作成。互いに評価し合った。
第3章「コンピュータとプログラミング」の「プログラミング」で重要なのはアルゴリズムだ。例題をもとにフローチャートを作成し、Pythonを用いてプログラミングした。
第4章「情報通信ネットワークとデータの活用」の「ネットワーク」は、ネットワークシミュレーションツール「Cisco Packet Tracer」で端末上に仮想ネットワークを構築して実習を行った。実習後、大学入試センターが2020年に公表した「情報」試作問題(検討用イメージ)のネットワークの問題に取り組ませたところ、正答率が上昇した。
「データ分析」では、表計算ソフトを使用し、統計的な処理を体験。スマホの利用時間とアプリの利用時間など、2つの量的データの相関係数を求めたり、散布図に回帰直線を引いて、単回帰分析を行った。クロス集計による分析も行った。
本校の総合的な探究の時間において、研究テーマに関してアンケート調査を実施する生徒がいるため、収集するデータが量的、質的のどちらになるか考え、適切な分析方法で処理できるよう指導した。
生徒にとって表計算ソフトの操作方法を覚えることは大変なようだったので、データ分析は今後、表計算ソフトを用いたデータ分析のための処理を学ぶ時間と、統計処理されたデータから分析する時間とに切り分けることを考えている。
定期考査では、大学入学共通テストに似た問題構成としたところ、正解率は良く、理解が進んでいると考えている。一方本校では、「情報Ⅰ」を1年生で学ぶこともあり、受験科目であるという意識がまだ低いようで、大学入試までのフォロー方法を検討しているところだ。
【第91回教育委員会対象セミナー・札幌:2022年11月4日・5日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年12月5日号掲載