教育委員会対象セミナーは11月4、5日、札幌市内で開催。2日間で教育委員会と教員が200人以上参集した。当日の講演内容の一部を紹介する。
札幌市教育委員会(小学校199校、中学校99校)の1人1台端末環境における「学ぶ力」の育成について、学校教育部教育課程担当課の寺田晋哉義務教育係長が説明した。
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札幌市では、子供1人ひとりが「自分が大切にされている」と実感できる学校づくりを目指し、ICT教育を推進している。ICTの良さを、まず使って実感し、子供たちや教職員が「活用したい」と思えるように心掛けている。
今年度は学びの質を高めるため、「効果的な活用」「学校間・学級間の差の解消」「家庭との連携・協働」の3つに重点をおいた。
効果的な活用を進めるため、好事例とデータの共有を図った。「1人1台端末活用のガイドライン改訂」や、市内の小中学校の教職員が教科ごとに研究協議を行う「札教研事業研究集会」での情報交換、さらに昨年度から作成している「GIGAスクール通信」で各学校の活用事例紹介などで共有を進めた。今後はこれらの事例をデータベースとして蓄積し、大きな財産として活用していく。
まず情報端末利用について家庭の理解を深めるため、「さっぽろっ子ICT活用のススメ」を各家庭に配布。情報端末活用のルールや安心・安全に使うためのチェックポイント、端末貸与規程、貸与申請書兼同意書などを配布した。
年度初めには、情報モラルの向上のため、学校での授業と併せて、家庭で子供と保護者が一緒に確認する取組など、情報端末利用への理解が深まるよう心掛けた。
各校の教職員に「令和4年度ICT活用推進計画」を年度当初に配布。ICT活用に向けた1つひとつの取組が「連動するプロジェクト」であることがわかるようにし、教職員が全体の見通しをもって取り組めるよう努めた。
ICTの特性・強みを課題探究的な学習に生かすには、一定程度の情報活用能力が必要である。情報モラルやタイピングスキル、情報の選択能力の育成も重要だ。
ICTの利点は、情報や他の生徒の意見を同時にデータ共有できる点と、子供たちが情報を詳しく知りたいと思い、自らの判断で知識を深めていくことができる点だ。今まで意見が言えなかった子供も積極的に意見を発しやすくなるなど、1人ひとりを大事にした学びにつながる。
学校間の活用度合いの差をなくすため、パートナー校同士の関わりの強化を図っている。近隣の小中学校がパートナー校となり、ICT活用状況について情報共有。小中学校9年間で情報活用能力を育んでいく。
今年度はICT活用モデル研究校として小中学校5校と高等学校1校を指定。活用事例を紹介する動画を作成し、市内全校で共有している。
家庭と学校の連携・協働を進めるため、情報端末の持ち帰りを通じて学校の授業内容や取組を保護者が知ることができるよう努めている。
また、家庭でも、積極的に情報端末を使うことを働きかけている。夏休みに、家の手伝いを動画で記録して発表する、算数で、家にあるものの体積を測り、端末に記録するなど、教室ではできない、家庭だからこそ学びが深まる取組も始まっている。
今後も「学ぶ力」を育成するため、情報端末の有効活用を進める。
【第91回教育委員会対象セミナー・札幌:2022年11月4日・5日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年12月5日号掲載