教育委員会対象セミナーは11月4、5日、札幌市内で開催。2日間で教育委員会と教員が200人以上参集した。当日の講演内容の一部を紹介する。
2022年度までの2年間、札幌市のICT活用モデル校であった北海道札幌市立中央小学校。中里彰吾教諭はICTのより良き使い手を育成するモデルカリキュラムについて報告した。
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本校では実証校としての2年間を土台とし、今年度はICTの良き使い手の育成を目指し、情報モラル教育の洗い直しを進めている。
ブラウザのポップアップメッセージやOS更新などのメッセージが出てくるだけで驚いてしまうのが低学年児童である。”慣れる”時間が必要であり、日常的に端末活用することで指導の機会も増える。また、低学年にとってデジタルの世界は実世界からかけ離れている認識だ。デジタルも一つの社会であることを意識させる必要がある。
子供たちはYouTubeを見たりゲームをしたりなど情報の消費的な活動が多い。そこから脱し、創造的な活動を促したい。デジタルにより表現の選択肢が増えたことは学びの環境としてのバージョンアップであると捉えているが、メディアの特性に応じて適切な表現方法を選択する力も必要だ。
これらの課題解決に向けてより良き使い手を育成するには、日常の指導の積み重ねにより子供自身のリテラシーを高めること、そのためにはデジタルシティズンシップ教育の考え方にある「一回立ち止まる、考える、相談する」というステップを繰り返すことが重要だ。
最初の取組は、本校でChromebookを導入した時だ。フィルタリングやアプリ制限などの課題があり、決まりが必要であった。わかっていてもできない部分は多く、情報モラル教育で追いつかない部分がある。
そこで「一回立ち止まる、考える、相談する」ことを身につけるため、子供たちとルールや約束を考えることにした。
大人が一方的に与えるルールではなく、子供自身がどう使っていきたいのか考え、話し合ってルール作りに取り組んだ。
学校としても全学年で授業計画を作成。昨年の冬休みには、「スマホ依存」をテーマにした情報モラル教材の動画を視聴した作文を宿題とし、Googleドキュメントに提出させ、土台を作っていった。
昨年度は「デジタルフットプリント」について4~6年生で学習。デジタル社会で自分自身が行った行動や個人情報を管理できているかを考えた。
例えばYouTubeへのコメントを自分で管理しているか、オンラインゲームのスコアで自分の名前が表示されることに気づいているかなどをチェックし、個人情報に対する意識を高めた。
「クリックベイト」(ネット上の虚偽・誇大広告)について考える授業も行った。
つい人が見たくなってしまう表現はどういうものか、それによってどういう効果があるのかを学び、自身の表現活動に役立てもらいたいと考えた。動画サイトのサムネイルの効果についても考え、情報を受け取る側は目立つ広告や過剰な表現に気をつける必要があるという気づきにつなげた。これは、国語で学んだポップ表現につなげた。
6年生の総合的な学習の時間では「加工した写真を発信する責任」について学習。なぜ写真を加工するのか、写真等の画像加工で許容できること、できないことは何等情報に対する批判的な視点や、許容できることとできないこと、その選択や判断について考え、「楽しませるのは良い」「わかりやすくするのは良い」「人を傷つけるのはだめ」等、様々な考えを出し合い、整理していった。
このほか、ワークシートに保護者のコメント欄を設け、子供がどのような学習をしているのかを知ってもらう一助としている。メディアリテラシーは大人にとっても重要だ。
今後は、様々な情報について、情報の不用意かつ無責任な発信や共有の危険について考える授業を計画している。
【第91回教育委員会対象セミナー・札幌:2022年11月4日・5日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年12月5日号掲載