教育委員会対象セミナーは11月4、5日、札幌市内で開催。2日間で教育委員会と教員が200人以上参集した。当日の講演内容の一部を紹介する。
北海道教育大学附属旭川小学校のクラウド活用による授業改善と校務の効率化について、菊池勇希教諭が報告した。
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本校では、教育目標である「主体的な人間の形成」及び研究主題である「新たな価値を作り出す子供を育成」するための手段として、情報端末を利活用することとしている。各教科で求められる資質・能力や情報活用能力を育成するため、課題発見から情報収集、批判的な思考や効果的な表現と評価を改善するなどの「思考力」「判断力」「表現力」を、情報端末を利活用し、向上させることが重要だ。
児童が情報端末をスムーズに、負担なく利用できるよう学習eポータルを活用している。学習eポータルとはそれぞれのアプリケーションをつなぐ入り口のようなもので、本校ではL-Gateを使用。ログインすると、デジタル教科書や各アプリケーション、トライヤル中のコンテンツもIDやパスワードを入れることなくシングルサインオンで使用できる。学習eポータルの利用は、教育データの蓄積につながる。
情報端末を利用した授業改善を進める際は「信じて任せてやらせてみる」ことが重要だ。児童は「情報共有する価値」「協働する価値」に気づき始めている。
4年生の社会では、社会的事象に対し、学習問題を設定した後、事実追求をしていく。情報端末を使用することで、複線的に事実確認ができ、調べるものを自分自身で選び、事実を深く追求することが可能になる。今回は地元の歴史、文化に対し、副読本やインターネット、Zoomでの取材など複数の方法で調査し、歴史や事実、また関わっている人の思いなどを授業支援ツール(ロイロノート)でまとめ、グループで共有した。自分が調べた情報を資料を見せながら説明したり、友達からの質問に答えたり、十分な意見交換ができ、個別最適な学びと協働的な学びの一体化した学習が実現できた。
1年生の「生活」の授業では、家族が「にこにこ」になる時はどんな時かを考えた。情報端末を持ち帰り、家庭での「にこにこ」を記録し、共有する授業を行った。今まで、家庭での学習の状況を把握することは難しかったが、情報端末を活用することで、家庭での取組を可視化・共有することができた。
当初1年生ということで、写真の撮影程度しか教えていなかったが、児童が自分で調べ、授業支援ツールに写真と音声を合わせたり、また他の児童は、手書きや動画機能を使って提出した。
夏休みに入っても、「家族にこにこ作戦」として継続して実施。これまで見えなかった家庭での活動が見え、フィードバックしながら家庭生活のさらなる充実につながると考えている。
授業外でもICT活用は進んでいる。6年生ではクラスのイラスト係がクラスメイトの誕生日を調べて情報端末でバースデーカードを作成し、クラス全体に共有している。児童たちは「おめでとう」とコメントを発信し、友達の良いところをGoogleスプレッドシートに記入して1枚にまとめた。これは良いプレゼントになる。授業で身につけた力を自由に発揮できるようにすることが重要だ。
最初からうまくいったわけではない。ルールについて学級会で話し合い、よい関係性を構築した。大人がルールを押し付けないことが、資質能力の育成につながる。
校務DXについては、MicrosoftSharepointで校内ポータルサイトを作成し、ロケーションフリー化を図った。すべてのファイルをクラウド管理することで教室でも研修先、在宅でもデータを活用できる。また協働編集やリンクの活用により、作業の効率化につながった。
この他、行事の一斉連絡や緊急時の情報共有にチャットツールを活用したり、コロナ禍でも保護者懇談をオンラインで実施した。Googleカレンダーの予約フォームで日程調整も効率化した。
今後も、クラウドを活用した校務の効率化を進めていく。
【第91回教育委員会対象セミナー・札幌:2022年11月4日・5日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年12月5日号掲載