教育委員会対象セミナーは11月4、5日、札幌市内で開催。2日間で教育委員会と教員が200人以上参集した。当日の講演内容の一部を紹介する。
2010年のフューチャースクール推進事業実証校である石狩市立紅南小学校で1人1台端末活用に取り組んでいた前多香織教諭は、石狩市立双葉小学校の主体的、対話的で深い学びを目指し、1人1台端末の活用について報告した。
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GIGAスクール構想以前は一部の教員がICTを活用することが多かった。現在は、全クラス同じ環境になり、「もっとICTを活用できるようになりたい」と考える教員が増えている。石狩市のGIGA端末はWindowsOSで、Microsoftforeducationを採用している。
双葉小学校ではICT担当を置き、各分掌と連携したプロジェクトチームを編成。情報端末に関わるルールやオンライン授業の支援基準などを検討し、職員会議で全職員に共有しながら進めてきた。また月1回、GIGA研修を実施。GIGA端末を活用することで、教員や児童が苦しむのではなく、笑顔なろうという目標を掲げて取り組んでいる。研修では授業支援ソフトXSYNC(バイシンク)やTeamsの使い方、オンライン授業支援の方法などを学んだ。
教員のGIGA活用スキルチェックも実施。「ICTの言葉が分からない」という不安を口にする教員もいたため、シングルサインオン等の用語チェックから始め、現状把握に努めた。研修を重ねていく中で少しずつ不安が解消され、「端末活用ができるようになると児童の反応が良くなり、楽しい」という教員が増えた。
教員も児童たちも様々な場面で日常的にICTを活用している。一斉授業におけるICT活用は、教員による教材の提示と教員・児童間の双方向のやりとりがある。個別学習では、ドリル学習や検索、作品作りなどが行われている。
協働学習では、グループやクラスでファイルを共有しながら話し合ったり、共同で制作したりプレゼン発表などの場面で活用している。コロナ禍等で欠席している児童も、オンラインで授業に参加し、端末を介して話し合いに参加している。
国語の授業では、個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指して授業をデザインした。
授業ではマイノート(コラボノートのツール)を使用している。児童が自分で思考を広げたり、深めたりすることをサポートする。黒板はノートには写さず、コラボノートにアップしている。これは学習履歴として蓄積され、最後の単元のまとめに活用している。
特に気をつけていることは、毎時間「何を学ぶのか」を児童が意識できるようにすることだ。そのため児童は毎日、今日はどのような学習をするのかを理解して参加している。
児童は教科書を音読し、読み終わった後に大事だと思った部分にラインを引き、なぜ引いたのかを発表。全員で話し合い、他の人の意見も参考しながら、深く読み、考えることへつなげた。デジタルは何度も書き直せる点が良く、個性あふれるマイノートになった。紙のノートは、本時の課題とまとめのみを記入している。
課題は、児童の考えや感想をより生かした学習計画を作ること。読むことが苦手な子や対話が苦手な子への支援だ。
次のステップにつなげるため、継続してGIGA研修を行っていく。主体的で対話的、協働的な学びのある授業デザインのもとでICT活用することが重要だ。情報教育カリキュラムと教育課程とのつながりも意識する必要がある。
「児童は授業で何を学ぶのか」を明確にした上でICT活用を判断したいと考えている。今後、学習者用デジタル教科書が全て導入できれば端末を持ち帰る割合も増えていくだろう。学習効果としても、児童の習慣づけが徐々に浸透するようにしたい。
【第91回教育委員会対象セミナー・札幌:2022年11月4日・5日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年12月5日号掲載