教育委員会対象セミナーを3月27日、仙台市内で開催した。文部科学省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダー・武藤久慶氏、新地町教育委員会、郡山市教育委員会、岩沼市立岩沼西小学校、福島市立吾妻中学校、仙台白百合学園小学校、宮城県古川黎明中学校・高等学校が登壇。当日の講演内容を紹介する。なお肩書きは3月末時点。
古川黎明中学校・高等学校(佐藤浩之校長・宮城県)の奥山敏基教諭は、探究力を身につけ、生徒が成長するためのICT活用について報告した。同校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校で、日本教育工学協会の学校情報化優良校に2020年度より認定されている(現在再認定申請中)。
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本校は15年、県のICT利活用授業力向上プロジェクト実証実験校となり、ICT活用のスタートを切った。20年には中学校で1人1台端末を整備。高等学校は22年度より、学校で指定した機種を各家庭で購入するBYAD方式で1人1台端末活用が始まっている。
情報活用能力の向上を目指し、部活動や生徒会活動、学校行事の企画・運営など、学校生活のあらゆる場面で活用することを目指している。
1人1台端末ではグループ内でのデータの共有、スライド、ポスターや論文などの共同編集ができ、自由度の高い学びが可能になった。個人の情報端末にポートフォリオとして記録を残し、大学や専門学校の入試、公務員試験、就職活動にも生かすことができる。
長年のSSHが探究学習に活かされている。やりたいことを教員が制限しないようにしており、GoogleサイトやYouTubeでの発信が始まっている。コロナ禍で困った飲食店をPRする動画を作成した生徒は、飲食店のおすすめメニューなど店のPRポイントを取材し、多くの人に足を運んでもらえるような動画を作成するなど、取材・発信する活動が広がっている。
インスタ等を禁止する学校も多いようだが、チャットGPTの教育活用が議論され、AIや情報活用能力の育成が必須とされている今、本校は禁止する方向ではなく上手く活用することを目的にすべきであると考えている。生徒が成長するための使い方が必要であり、社会のルールを学校のルールとすることを本校の方針としている。
ICTを教員が使わなかったとしても生徒の情報活用能力を育成し、ICT活用を支援できると考えている。教員の役割が変わったことを理解することが第一歩になる。
校内研修会では、生徒が情報活用能力を身につけるための授業や授業外での日常活用、生徒が身につけるべき情報モラル、ネットワークに頼りすぎない活用方法などを確認。特にデジタル・シティズンシップの観点を意識している。
自分の強みを見つけ、伸ばしていくとその他の能力が向上するという「多重知能理論」に賛同してICT活用に取り組んでいる。
化学の授業では、生徒が元素記号を情報端末上で、自由にデザイン。ユニークな作品を互いに評価し合って授業も盛り上がった。動画で提出する宿題もあり、クリエイティブな学習を進めることで学力も伸びている。生徒教員間通信もオンにしており、授業時間以外でも質問・やりとりできる。
「情報Ⅰ」は学習内容が多い。大学入試でも取り扱われるようになったが、大切なことは、他教科とコラボレーションすることや、最新情報に触れること。例えばメタバースやVR、アプリ制作などに取り組み、創発性や探究力を育みイノベーションを起こす力につなげることが重要である。
例えば、特殊な骨を様々な角度から撮影。AR(拡張現実感)技術で画像を合成し、組み合わせ、情報端末上で回転させたり、拡大したりして観察。従来は観察できなった部分を多角的に観察でき、考察を深めた。
このような授業の延長に探究がある。「人はどのようにブランコをこいでいるか」という課題を設定。ブランコに立ってこいだ場合と、座ってこいだ場合等の動作をプログラミングし、ロボットの駆動装置を作って比較検討を行った。こぎ方によって、動作の仕組みや力の強さや伝わり方が異なることを生徒自身で説明しあい、理解を深めた。
【第97回教育委員会対象セミナー・仙台:2023年3月27日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年5月1日号掲載