教育委員会対象セミナーを3月27日、仙台市内で開催した。文部科学省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダー・武藤久慶氏、新地町教育委員会、郡山市教育委員会、岩沼市立岩沼西小学校、福島市立吾妻中学校、仙台白百合学園小学校、宮城県古川黎明中学校・高等学校が登壇。当日の講演内容を紹介する。なお肩書きは3月末時点。
仙台白百合学園小学校(早坂博之校長・宮城県)では1人1台端末としてLTEのiPadを導入している。浅沼勉教諭は、1人1台端末環境の授業と学校生活での活用について報告した。同校では6月23日に公開授業を行う予定だ。
…・…・…
2019年から情報端末を導入しており、21年に全児童にiPad(LTE)を整備し、Wi-Fi環境と併用している。ICT活用アドバイザーとして佐藤靖泰氏(元宮城県教育委員会指導主事)に依頼。企業の協力を得たり研究者の来校・アドバイスを得たりしている。
学習支援ツールも活用し、教員の手元で児童の活動を即時に把握できるようになった。思考途中のプロセスを把握して児童がつまずいたり理解できていない際にすぐに支援している。紙のノートを集めてコメントを入れて戻すというプロセスが不要になった。
デジタルでは、「コピー&ペースト」「ピンチアウト」「ピンチイン」等ができ、紙に書き込むよりもやり直しが容易だ。慣れると、紙で進めるよりも思考そのものに集中することができる。
小学校2年生では、図形を等しく半分に分ける問題で、端末上で図を回転させたり、重ね合わせたりしながら考えた。リアルの紙図形や紙テープ、おはじきではアドバイスを書き込めないが、デジタル上だと教員はアドバイスを書き込むことができる。また、児童同士でぞれぞれの考えを共有して参考にすることができ、多くのアイディアが生まれ、深い学びにつなげやすくなった。
教師の情報端末より電子黒板に提示した実験等の映像を配信することで、児童は席の場所により手元で確認できる。全体的な指示は、電子黒板で確認するなど活動に応じて使い分けている。
デジタル化により、授業で使用するワークシートは、授業中に児童と共に作ることにした。児童が「枠だけでよい、自分で作りたい」と言い出したことがきっかけだ。
季節の植物を探す学習では、初めは教員がタイトルや全体の枠線、写真を添付する位置等を示したワークシートを作成して児童に配布した。児童は次第に使い方が分かるようになると写真の位置やタイトル、説明のテキストも自分で考えて作成するようになった。現在は、情報を収集し、写真や動画を撮影するなど、リアルタイムで自らワークシートを作成。教員は方針を示し、やり方は児童が選ぶ、ということが可能になった。
このような学習が始まると、テキストによる表現力が次第にレベルアップし、短時間でタイピングできるようになりたいという意欲が増し、練習を自発的に重ねるようになった。
授業の終わりには、その日の学習のまとめが出来上がっている。それを見ながらこの時間に何を学んだのか、何がわかったのかをふり返り、その上で、次の単元ではどういうことを学びたいのかを児童から引き出して課題を決めている。
授業だけでなく、学校生活でもICT活用が浸透している。
修学旅行のしおりを子供たちが情報端末で作成した。必要な部分から作り配布し、追加があれば随時更新していくことができる。
欠席した児童へのサポートにも有効だ。その日の授業内容を保存し、送付することで共有・フォローアップできる。児童から質問があれば、教員がオンライン上でやりとりしてアドバイスする。児童は家庭から授業参加することも容易にできる。
朝の会や帰りの会では、その日の連絡事項など、伝える内容を自分の情報端末から大型提示装置に映し出し、説明している。委員会活動やプレゼンテーションでは話し合いの内容を書記係の児童がその場で端末に入力し、大型提示装置でリアルタイムに共有する。情報端末でも保存されるので議事録を別途作成する必要がなくなった。
ICTは常に進化する。子供たちもICTを活用することで新しい発想が生まれる。技術の進歩とともに学びも進化させていけば良いと考えている。
【第97回教育委員会対象セミナー・仙台:2023年3月27日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年5月1日号掲載