教育委員会対象セミナーを3月27日、仙台市内で開催した。文部科学省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダー・武藤久慶氏、新地町教育委員会、郡山市教育委員会、岩沼市立岩沼西小学校、福島市立吾妻中学校、仙台白百合学園小学校、宮城県古川黎明中学校・高等学校が登壇。当日の講演内容を紹介する。なお肩書きは3月末時点。
福島県郡山市(小学校49校・中学校25校・義務教育学校2校)教育研修センターの橘内伸行指導主事は、端末活用から見えてきた課題と教育委員会の役割を報告した。
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本市は1人1台端末を活用した段階的な学びの変容を目指し、授業改善に取り組んでいる。市教委はすべての市立学校に導入している授業支援アプリをはじめ、学習者用デジタル教科書、デジタル新聞などの教材やアプリ・サービスの活用の段階と場面を示した授業づくりリーフレットを作成し、学習活動での日常的な活用を促進している。
22年度は全校にオンライン学習教材を導入し、1人ひとりの学習状況に合わせた個別最適な学びや教員の課題作成や採点の負担軽減、保護者の教材購入費の負担削減につなげている。
家庭への端末持ち帰りも推進。オンライン教材による課題の配信や長期休業中にオンラインで学習支援を行うなど、各校が創意工夫している。
端末の活用を進める中で4つの課題が見えてきた。①端末やアプリの操作や指導への不安、②効果的な活用や授業づくりに向けた研修、③トラブル発生への不安、④端末等の管理負担である。
操作や授業づくりの支援として、教員が気軽に参加できるセミナー型の研修や要望に応じて各校へ訪問する出前講座など現場のニーズに応じた研修の充実を図った。学習eポータル導入時の設定や校務支援システムの年次処理のオンラインサポートも実施した。
教育研修センターWebサイトは校務用端末のみで閲覧できるイントラネット内の運用から、1人1台端末など外部ネットワーク環境でも閲覧できるよう改善。2月にWebサイト内に開設したGIGAスクール支援サイトでは端末管理や各種設定、アプリ・サービスの利用方法のマニュアル動画を公開している。Googleクラスルームを利用して教員同士が情報共有できる場も作った。自由参加型で、約450人の教員が相互の情報共有を図っている。
トラブルへの不安に対しては情報モラル教育の充実を図る。22年度にLINEみらい財団と連携して活用型情報モラル教材を作成した。23年度からの指導の充実に活かす予定だ。今までの情報モラル教育は事例紹介や危険性の啓発などが中心で、子供が当事者意識を持ちにくかった。端末活用の日常化を好機に、トラブル発生時も問題を自分事として考える成長のチャンスと捉え、積極的な情報モラル教育を推進していきたい。
22年4月よりGIGAスクール運営支援センターを教育研修センター内に開設した。これまでは教育研修センター内のICTヘルプデスクで対応してきたが、端末の持ち帰りなど活用の広がりを受け対応件数が増加。月1000件を超えることもあった。そこでICTヘルプデスクを拡充し、迅速に対応できるようにした。市教委と密に連携したサポートにより教員の要望に円滑に対応できている。9月からは端末の持ち帰りに向け、保護者や児童生徒対象に休日対応も開始した。
23年度からICT支援員をすべての市立学校に配置する。ICT活用促進と教員の負担軽減に資すると期待している。市教委も各校の取組状況の共有など情報提供を積極的に行い、各校の効果的なICT支援員の活用をサポートしていく。
福島県では22年度よりGoogleアカウントを県内全児童生徒に付与しており、小学校から高校まで12年間継続して使用できる。本市では22年の年末に運用を開始した。アプリ・サービスのログインIDとして利用でき、ID・パスワード管理の負担軽減につながる。導入にあたっては、初期設定作業を市教委が担当、アプリ・サービスとの連携もICT支援員の協力を得ながら設定し、教員への負担軽減を図った。
学びの変革に向けた大きなチャンスが訪れている一方で、環境の変化により教員は様々なサポートを必要としている。学校、教員を支えるのが教育委員会の役割。今後も学校現場に寄り添った支援に努めていく。
【第97回教育委員会対象セミナー・仙台:2023年3月27日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年5月1日号掲載