教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー~ICT機器の整」が、12月5日に東京で開催された。当日は約110名の教委・教員が参集した。
三田国際学園中学校・高等学校では、学習の記録などを電子化してeポートフォリオとしている。全校でeポートフォリオを活用した教育について田中教頭が報告した。
同校は前身の戸板女子学園が共学化し、平成27年に三田国際学園と校名を変更した。ICT教育は継続的に実施しており、平成29年度からeポートフォリオを導入した。
12のコンピテンシー「創造性」「社会参画」「責任感」「問題解決能力」「リーダーシップ」「率先」「生産性」「革新性」「探究心」「コミュニケーション」「異文化理解」「共創」を理念として、すべての活動、教育、授業に紐づけている。授業では「考える力」「英語」「サイエンスリテラシー」「コミュニケーション」「ICTリテラシー」の5つの力を伸ばすための「世界標準」の教育を目指す。
ポートフォリオに関しては「どのような行事を用意すればいいか」「どのような機会を設ければよいか」という声をよく聞く。
ポートフォリオのために何かをするのではなく、ポートフォリオの本質的な意味を理解した上で、eポートフォリオを活用すればよい。
ポートフォリオというと、学んだことを他者に伝えるためショーケース・ポートフォリオに入れて提示する「Assessment of Learning」が挙げられる。ただし、これだけでポートフォリオを活用すると教員も生徒も何をすれば良いか分からなくなる。主に教員が行う「Assessment for Learning」は、子供が蓄積したポートフォリオを見て、学びの現状や状態がどうあるべきかを確認するためのものだ。さらに大事なのが生徒が自分で蓄積して自己の成長を可視化しながら次の学びに転化していく「Assessment as Learning」だ。
教科活動でのポートフォリオで問題となるのが、生徒がポートフォリオを、なかなか蓄積しないこと。大切なのは生徒が「自分自身を振り返る」習慣や文化を作っていくことにある。
現在はポートフォリオにClassiを活用。はじめに生徒が全く知識を持たない状態で教員が質問し、その捉え方をポートフォリオに蓄積。生徒は気付いた点や分かったことなどをポートフォリオに記録。その後、最初に質問した時と比較できるように、類似の質問をして成長の跡がわかるようにしている。
探究活動でもポートフォリオを活用。広島の修学旅行では留学生と一緒にテーマを決めてフィールドワークを行い、平和とは何かを多角的に捉える。問いごとにポートフォリオに蓄積する場面を設けることで、自分の成長を振り返ることができる。
同校では年3~4回、教員全員参加による全体研修を行っている。さらに希望者はスキル別の個別研修を受ける。
ポートフォリオ研修では、学園長の講話の後、参加者は授業のロールプレイを体験。さらにデザインワークショップを行い、実践へとつなげていく。
研修ではポートフォリオを使うまでのステップを明確に示す。ステップ1では、「振り返るとは何か」を示す。
ステップ2では、到達目標とスキルを教える。何のために何を学ぶのか、目標を明確にするためだ。ステップ3では、何のためにポートフォリオを行うのか、導入目的と必要性を明確にする。友達との友好関係がうまくいった、何かができるようになったなどを挙げる生徒がいるように成功実感は多岐にわたる。ステップ4では、習慣化するためのフィードバックを提供する。学年通信で優れたポートフォリオを発表するなど習慣化する機会を設けている。
海外の教育を見ると、日本の教員の質の高さがわかる。一方、組織力が弱い。資質を全体で共有しながら還元していける研修を作ろうとしている。
【講師】三田国際学園中学校・高等学校 教頭 田中潤氏
【第54回教育委員会対象セミナー・東京:2018年12月5日】
教育家庭新聞 新春特別号 2019年1月1日号掲載