教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー~ICT機器の整」が、12月5日に東京で開催された。当日は約110名の教委・教員が参集した。
平成21年度、すべての小中学校の普通教室に電子黒板を導入した荒川区では平成25年度、モデル校4校(第三峡田小、尾久小、第二日暮里小、諏訪台中)に1人1台のタブレット端末を、平成26年には全小中学校にタブレット端末を導入するなど国の方針に則った整備を進めており、順調に成果を上げている。瀬下指導室長は区のICT整備と活用状況について報告した。
区ではICT教育の推進の目的を「グローバル社会をたくましく生き抜くための『21世紀型能力』を身に付ける」とし、小学校1~2年生は4クラスに1セット、3~6年生は2クラスに1セット、中学校は1人1台のタブレット端末を導入。現在、約1万台のタブレットが稼動中だ。
モデル校の諏訪台中学校では、導入後2か月ですべての授業でタブレットを活用した。英語で自己紹介をする、美術では作品を拡大して鑑賞する、理科実験の動画を見る、プールにタブレットを持ち込んで泳いでいる姿を撮影して振り返るなど活用の場面が広がっている。全教室に電子黒板を整備済で教員のICT活用が日常化してからのタブレット端末導入ということもあり、短期間で活用が進んだようだ。これらの成果は「ICT教育におけるタブレットPC活用の成果検証及び今後の方針について」としてWebで公開している。
授業は「読み・書き・計算」を基本とし、実験や実習といった実物に触れる「体験」を重視。ICTは授業ツールとして、効果的な場面でタブレット端末を活用することを意識して展開している。
教員研修も重要だ。
導入前研修(理論編)、キックオフ研修(実践編)のほか、校長・副校長・教頭など様々な職層に対してタブレット端末の研修を入れ、理解を深めた。特にキックオフ研修は教員の不安を払しょくさせる良い機会となった。
タブレット端末を活用することで授業は大きく変わった。それまで教員から指名された児童生徒がノートの内容を黒板に書いていたが、タブレットの画面を電子黒板に映し出すことで、時間が大きく短縮。まとめや振り返りの時間を長くとることができ、「深い学び」につながっている。2020年にプログラミング学習が必修化され、荒川区でも準備中だ。電子黒板とタブレット端末があるのでプログラミング学習についても良いスタートが切れると考えている。
学校図書館でのタブレット端末活用も積極的に推進。学校図書館にタブレットを持ち込み、図書資料とインターネットを使って調べるなどアナログとデジタルそれぞれのメリットを生かして学んでいる。タブレット端末のリース期間終了は平成31年7月。これまでの成果と今後の課題を議会に説明した。今後もICT教育の充実を図っていきたい。
【講師】荒川区教育委員会 指導室長 瀬下清氏
【第54回教育委員会対象セミナー・東京:2018年12月5日】
教育家庭新聞 新春特別号 2019年1月1日号掲載