教育委員会対象セミナーは12月2日、東京都内で開催。教育委員会と教員が100人以上参集した。当日の講演内容の一部を新年号と2月号で紹介する。
奈良市教育委員会(小学校42校・中学校22校)事務局教育部学校教育課ICT教育推進係の米田力係長は、クラウドサービスを用いた汎用的なデータベース構築について報告した。
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奈良市では2016年からの文部科学省・総務省の実証事業に参画して校務系・学習系システムの統合による子供の学習保証、課題の早期発見、データに基づいた支援の研究を行った。その際に様々なデータを1つのIDによって連結した。
アンケートデータとして、教育委員会で統一アンケートを作成したり、本市ですでに実施している個別最適化学習教材「学びなら」を利用したりするなどデータの統一性を図った。
学校別、学級別に学習の定着度への課題が比較的多くみられた学校は、アンケート結果においても、自分の意見や考えが説明できるか、各教科の勉強が好きか、などの質問にはネガティブな回答が多く見られた。
これらの結果を基に対策を検討し、該当児童がポジティブに学習に取り組むための支援を行ったり、苦手分野にフォーカスした個別の学習を実施したりした。教育データの可視化システムの活用については、現場の教員からも「データを基にして児童生徒に応じた指導ができる」など好評価を得られた。
奈良市では、2020年のコロナ禍による一斉休業の際に、全家庭にインターネット環境の有無についてアンケートを実施。端末と通信環境が整っていない家庭には端末とモバイルルーターを無償で貸与した。9月には1人1台端末の整備が完了し、持ち帰り運用もスタート。2021年3月には全校のネットワーク工事が完了し、特別教室を含む全教室にWi―Fi環境を構築するとともに、全校に学級数分のカメラ・スピーカーマイクなどを整備。5月にはオンラインで授業を配信するなど、コロナ禍の中、早い段階で端末活用の環境を整えることができた。
奈良県では市町村の枠を超えて、県域共同で端末を整備。参加自治体の95%、児童生徒の98%にあたる台数で共同調達を行った。そのうちプラットフォームもChromeOSが96%となっている。Googleアカウントも県域共通のドメインを提供。教職員、子供どちらも県内の異動や転校後もデータは引き続き使用。子供は小学校入学から県立高校卒業まで最大12年間同一アカウントを利用できる。
1人1台端末を整備したことで、デジタルドリルやアンケートデータの取得が容易になり、端末の操作に関するログなどの学習以外のデータも取得できる。
奈良市では、GoogleのアカウントをEducationplusにアップグレード。Google BigQueryを導入してデータを可視化している。支援が必要な子供の早期発見や教員の勘や経験に加えたデータによる裏付けができる。今後はデータ駆動型の教育課題の解決にもつなげたい。
このほかアップグレードするとGoogle Meetの参加人数が100人から500人に増加したり、録画ができたりするなど、コロナ禍で利用頻度の高い機能の充実にもつながった。
Google Looker Studioも利用。仮説・検証・意思決定を支援するためのダッシュボードと様々なレポートを利用できる。モデル校では各教科の単元末テストの結果や端末を活用したアンケート結果の各回答状況から、学期ごとの個人用のレポートも作成し、児童生徒の学習状況を可視化している。
Googleドキュメントやスライドなど、各種サービスの利用状況も可視化できる。利用率の高い学校には、どのように使っているのかをヒアリングし、好事例として蓄積できる。
現在構築中のものとして、導入しているAI教材Qubenaも可視化・分析できるようになった。学習ログのデータを校務系データと掛け合わせることで、より詳細な見取りを進めていく。
【第94回教育委員会対象セミナー・東京:2022年12月2日 】
教育家庭新聞 新春特別号 2023年1月1日号掲載