教育委員会対象セミナーは12月2日、東京都内で開催。教育委員会と教員が100人以上参集した。当日の講演内容の一部を新年号と2月号で紹介する。
文部科学省初等中等教育局修学支援・教材課の山田哲也課長は、文部科学省のGIGAスクール構想における2023年度の方向性について説明した。
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2019年12月にGIGAスクール構想がスタートしてから3年が経ち、端末の利活用について「試行錯誤」から「日常化」へ進み始める段階である。
現在、公立小中学校では、1人1台の児童生徒用端末整備が概ね達成され、高校の端末も2022年度中に1年生の端末が整備完了予定だ。学校ネットワークの環境も1300億円超の予算でほぼ整備できた。
活用が始まることで課題も出てきている。今年7月に公表した、全国学力・学習状況調査の際に行ったアンケート結果によると、学校間での端末利活用の状況や教員の指導力の格差が拡大している。
紙からデジタルへの単なる置き換えに留まり、ICTが子供の学びの変革につながっていない面も見られる。また、校務のデジタル化について教員自身がデジタルの恩恵を受けていない、などの課題も明らかになっている。次の端末更新の前に、集中的に解決を進める必要がある。
2023年度の文科省概算要求では、自治体間、学校間、教員間のICT活用に関する格差の解消と、効果的な実践例の創出とその普及、横展開を目的としている。教職員の働き方改革に向けた次世代の校務デジタル化にも集中的・一体的に取り組む。
特にGIGAスクール運営支援センターは、ICT活用における地域間の格差を解消するため、機能強化を図る。市町村間の格差解消に向けて、都道府県や政令市等を中心とした広域連携の場を意識的に構築することで、単独では実施困難な自治体にも支援を届ける。
学校DX戦略アドバイザー等の有識者や民間事業者が参画した都道府県・市町村の協議会を設置して域内の教育水準の向上も目指す。本協議会には、都道府県や政令市のリーダーシップが強く求められる。
各自治体の利活用フェーズに応じた支援メニューも新設、拡充する。フェーズ1として、今まで対応してきたネットワークのトラブル対応やアセスメント(評価)、ヘルプデスクなどの対応は従来通り行う。
フェーズ2では、日常的なICT活用を目指す自治体に対し、ICT支援リーダーの配置や教師、事務職員、ICT支援員の研修・人材確保を支援。学校外でも学べる通信環境を整備するスキームを構築するため、モバイルWi―Fiルーターの広域一括契約を行えるようにする。
各自治体のセキュリティポリシーの改訂についても支援する。
フェーズ3として、端末活用が定着している自治体に対し、「学びのDX化」に向けたアドバイスを行う。施策の実現に必要となるサポート等、企画から実施まで一貫した伴走型の支援を行う。
GIGAスクールにおける学びの充実を図るための事業を進める。
リーディングDXスクール事業では端末の活用状況を把握分析するとともに、効果的な実践例を創出・モデル化し都道府県等の域内で横展開を図る。拠点校を約100校設置。都道府県、政令市、中核市に各1校をメドとすることで、身近なところにも拠点校があるという環境を整備し、ICTの「普段使い」による教育の高度化を図る。
次世代の校務デジタル化推進事業は、現在の統合型校務支援システムがネットワーク分離(閉鎖系ネットワーク)による運用がほとんどであり、GIGA時代・クラウド時代に適応していないことから、3年程度をかけて次世代の校務のデジタル化モデルの実証を進め、全国レベルでのシステムの入れ替えを目指す。さらに、「校務DXガイドライン」(仮称)の策定と、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改訂も進める。
GIGA端末はクラウド活用が前提であるためネットワーク回線の充実が重要だ。今後デジタル教科書の導入が進むことで、データの使用量はさらに増えていくことが予想される。その時に備え、各自治体は、学校からインターネットまでを確実かつ迅速につなぐネットワークを用意する必要がある。
ネットワークがつながりにくい場合、どこに問題が起きているのかがわかりにくい面がある。そこで定期的なアセスメント(評価)も重要になってくる。今後端末の更新も含め、ネットワークをシンプルかつ太く設定していくよう働きかけていく。
端末更新については、その議論の前に、まずは、端末の学校活用により授業改善が進んだ、校務が効率的になったなどの現場の声を1つでも多く国に届けてほしい。ICT活用によって出てきた課題を共有して改善を図る。そういう動きの1つ1つが端末更新につながると信じている。
【第94回教育委員会対象セミナー・東京:2022年12月2日 】
教育家庭新聞 新春特別号 2023年1月1日号掲載