8月23日、島根県松江市では初の開催となる「第59回教育委員会対象セミナー・ICT機器の活用と校務の情報化の推進」を開催。鳥取県と島根県の教育委員会・学校教員が参集した。
2016年度に鳥取県のエキスパート教員に認定された岩崎教諭は、ICTを活用した授業改善の取組を報告。「社会に出てからも役立つことを学んでいると語る」と考える生徒が増えていると語る。
生徒用タブレット端末の有無による授業の違いは、情報収集や整理、まとめ、調べ学習など生徒の「試行錯誤」の時間が圧倒的に増えること。生徒の裁量時間が増えると、授業変革が必要になる。
子供の質問に「オウム返しで答える」ことも授業変革のきっかけになる。「先生どうするの」と聞かれれば「どうしたら良いんだろうね」、「答えを教えて」と言われれば「答えは何だろうね」と返す。すると周囲の子供と共に自ら考えるようになる。時間を子供に与え、学習者をつなぐことが教員の役割だ。
最も重要なのは、教科の本質を理解して授業化する「授業設計」だ。研修では、まずICTから離れ、授業設計に取り組む。学習指導要領を読み直して単元を貫く問い(単元質問)、授業ごとの問い(内容質問)を考え、単元を構造化。高校入試では記述問題が多いこともあり、中学校では、記述で相手を説得する練習を重視することが必要だ。そこでゴールした生徒の姿の読み取りの際には「文章記述」「口頭説明」などを行う。その上で、どのようなICT機器をどのような形(一斉か、グループか、個別か等)で組み合わせていくのかについても検討。どんな力を高め、どんな活動に時間をかけたいのかにより、ICT活用の方法も変わる。
今の正解が今後も正解であるとは限らない。学習形態はどんどん変わっていく。そこで本校では、「2030年に生きる生徒の人生を支える力をつける」視点で校内研究に取り組んでいる。汎用性なスキルの育成を目指し、「Iwami10Skills」を次のように決めた。▼内発的動機▼自己管理力▼自己有用感▼持続的探究▼問題解決力▼批判的思考▼社会的責任▼合意形成力▼多様性受容▼情報活用力
これらスキルは教科を越えた学習の基盤だ。生徒用ルーブリックをまとめ、授業の冒頭にスキルを提示して自己評価につなげている。
各教科で連携するには、カリキュラム・マネジメントが重要だ。これまで、理科と美術、美術と国語、英語と国都、社会と英語、音楽と理科など様々な連携を実践。例えば美術+国語では西洋画の鑑賞に取り組んだ。理科+音楽+保健体育では「創作」で連携。理科で電流を学び、電子楽器を作成。音楽で創作を行い、体育ではその音楽を使った創作ダンスに取り組んだ。「演奏するための楽器つくり」「踊るための曲つくり」「曲のイメージを表現できるダンスつくり」など、課題が明確であった点が活動の成功の理由であると考えている。
これら教科横断の実践に向け、各教科の教科書で何が書かれているのかを共有することを、校内研究のタスクとした。そのために従来、分掌部会、職員会議、校内研修を毎週水曜日に行っていたが、校務支援システムの導入に伴い、会議室に投稿して2週間で意見収集。職員会議を廃止して授業づくりを検討する時間を作った。
今後はChromebook60台とGoogleclassroomを活用し、CBTも視野に学校での学びと家庭での学びの連続性を検証していく。【講師】岩美町立岩美中学校教諭・岩崎有朋氏
【第59回教育委員会対象セミナー・松江開催:2019年8月23日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載