8月23日、島根県松江市では初の開催となる「第59回教育委員会対象セミナー・ICT機器の活用と校務の情報化の推進」を開催。鳥取県と島根県の教育委員会・学校教員が参集した。
今年度から町内全校・全児童生徒用に1人1台の学習者用タブレット端末整備を実現した美郷町教育委員会(小学校2校、中学校2校、全児童生徒数361名)。これは田邊哲也教育長の教育に関する熱い思いと先見性で実現したものだ。その経緯と成果について南口指導主事が報告。
「美郷町で働きたい」と思う子供、「学ばせたい」と考える保護者を増やすため、グローバルな力を育む教育の実現に向けて「ICT教育」「ふるさと教育」二本柱で取り組んでいる。
ICT環境整備は2010年度よりICT教育推進会議と町教育研究会が連携して段階的に着手。小学校4年生以上の児童生徒に1人1台タブレット端末を整備したのは2015年度。その翌年度には3年生以上に1人1台とし、デジタル教科書を全学年に4教科(中学校は5教科)整備。2019年度10月には小学校1年生から1人1台環境を実現。各校には年2回の公開授業を義務付け、県外先進校への研修参加費も補助(各校5万円)。ICT支援員は4校に2名。授業計画の作成支援や更新作業などのメンテナンス支援を実施。月1回、連絡協議会も行っている。
小学校では、理科や算数、体育、総合的な学習の時間など各教科で活用。人型ロボットPepperを活用したプログラミング学習やインドネシアの小中学校とスカイプによる交流も実施。中学生が小学生に読み聞かせをする際もタブレット端末を活用した。
社会科見学では児童が全員、タブレット端末を持ち込んで臨み、記録や調べ学習に活用した。教員が写真を撮影するのではなく、児童生徒自身が撮影して発表資料とすることで、より主体的な学びを実現しやすくなる。
田邊教育長は、各校の研究授業に率先して参加。良いと感じたことはすぐに取り入れるという姿勢が各校の教員にも刺激になっているようだ。全国学力学習状況調査の最新結果では、課題解決能力が大幅に上昇。教科の点数も着実に向上しており、教員の8割が、ICT活用の効果を感じている。本整備は、9年間を見通した力の育成を考えるきっかけになった。今年度は学校情報化先進校(JAET)の優良校に4校中3校(邑智小学校・大和中学校・大和小学校)が認定を受けている。【講師】島根県美郷町教育委員会指導主事・南口周哉氏
【第59回教育委員会対象セミナー・松江開催:2019年8月23日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載