8月23日、島根県松江市では初の開催となる「第59回教育委員会対象セミナー・ICT機器の活用と校務の情報化の推進」を開催。鳥取県と島根県の教育委員会・学校教員が参集した。
日本さくら名所100選にもなっている雲南市でも人口減は深刻な問題だ。今後、様々な課題解決にICTを活用する能力は必要不可欠な能力と考え、木次小学校(11クラス・児童数201名)では児童がICTを活用するための3本柱を「学習規律・教育技術・ICT整備」として課題解決に児童が主体的にICTを活用する能力を身につけさせることを目標に、ICTを活用した授業改善に取り組んできた。この4年間で、教員のICT活用指導力や児童のICT活用力が向上した。同校の大久保教諭と久我教諭が報告した。
本校の各教室には2015年度より実物投影機、プロジェクター、無線LAN、教員用タブレットPC9台が整備され、翌16年には児童用タブレットPC10台を整備。毎年少しずつ数が増え、19年度には児童用計33台、教員用計12台になり、1学級で全員が活用できる環境になった。ロイロノートやコラボノートなどの授業支援ツールも活用して協働的な学習が可能になった。
教員は授業の他、研究授業の協議会などでも活用しており、日常的に活用することで、教員のICT活用力が向上した。
担任や校種、教科が変わっても「学び方は変わらない」ことで子供は安心すると考え、「雲南市授業づくりのポイント」を次の5つにまとめて授業づくりの土台とし、その中にICTを溶け込ませるイメージで授業作りを行っている。▼整合性のとれた「めあて」と「まとめ」▼効果的な言語活動▼子供同士のかかわりを意図的に設定▼教員は子供の意見をつなぐ▼タイムマネジメントを意識
学習規律について示した「木次っ子の約束」「木次っ子の常識 十ヶ条」は家庭との共通理解を図った上で、どの教室にも掲示。話している人の方を見て聞く、使わないときはタブレットを伏せておくなど、基本的な学習のルールを身につけさせることで、授業のねらいに即して、ICTを有効に活用した学びが可能になる。
タブレット端末は、調べ学習や発表資料制作のときに活用することが多い。検索方法や写真の撮り方など、基本的なスキルから育成。
情報収集ができるようになったら、収集した情報を整理分析する方法や、表現する方法へと、段階的に指導を進める。クラス全員でリアルタイムに書き込みができる協働学習支援ツールも活用している。
19年度からは各普通教室に印刷、コピー、スキャンができるカラー複合機も整備。児童が端末からデータを送信して印刷するなど活用が進んでいる。
皆で書き込んだ制作物の途中経過や完成作品など、学習の成果を教室で印刷して手元に残すことができる。タブレット端末を他のクラスが使用していて利用できない時間には、印刷物を活用して学習している。【講師】雲南市立木次小学校教諭・大久保紀一朗氏(東北大学大学院情報科学研究科)、同・久我真央氏
【第59回教育委員会対象セミナー・松江開催:2019年8月23日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載