8月23日、島根県松江市では初の開催となる「第59回教育委員会対象セミナー・ICT機器の活用と校務の情報化の推進」を開催。鳥取県と島根県の教育委員会・学校教員が参集した。
鳥取県では2018年度4月より、共同調達により全校一斉に統合型校務支援システムを導入・活用を開始した。関係各方面から「全校一斉開始の実現は難しい」と言われるなか、どのように実現したのか。下田氏が報告した。
統合型校務支援システムの全国一斉導入は「鳥取県自治体ICT共同化推進協議会」の設立がきっかけだ。業務改善に向けた導入・運用コストの効率化を図るキーワードを「共同化」とし、県内全市町村20団体と準会員8団体からなる協議会を設置。その下の部会の1つ「学校業務支援システム運用部会」で校務支援システムの有効性の検討を始めた。事務局は鳥取県。
どんな機能を求め、どのような方法・費用負担で共同調達を行うのか等を討議。教育現場の教職員がシステムの有効性を学ぶ勉強会も県内3か所で実施。共同調達合意までの苦難を乗り越えて2017年8月、県内全市町村が参加し、5年間の保守込みで調達。事業者決定後は、市町村の選抜メンバー(3地区10名)でタスクフォースを運営。多いときは毎週実施して、全校の帳票の統一を図り、導入フェイズでは受注業者と共に協議。3学期制121校、2学期制58校の混在であったが、2018年4月から県内全19自治体(4市14町1村・全179校・当時)で一斉に運用を開始した。
同年10月までに首長部局とほぼ同様の強固なセキュリティ対策環境も構築。インターネットと校務環境は仮想化で分離し、校務支援システムが外部から攻撃を受けない仕組みも構築した。
共同調達議論崩壊の危機は何度もあった。これを乗り越えることができたのは、早期に「目指す姿」を全市町村で協議、共有したこと。意見が分かれる場面では、ブレのないビジョン--共同化は子供のためであるという目標に立ち返り、後悔のない選択ができるように正しい理解を図ることで合意を得ることができた。最も大きな山は「共同化参加の意思決定」であった。会議の中で、共同化参加の最終意思を確認した際、全団体が賛同した瞬間は鳥肌が立った。困難は多いが、実現できればこのような絶大な効果がある。今後も「将来の鳥取県を担う子供たちのために」をスローガンに、今後も県と全市町村が連携して取り組む。
日野町は学校が小規模でメリットをあまり感じなかったため、当初は不参加を表明していた。しかし、市町村を超えて、転出入処理がシステム上でできること、教職員が異動しても同じ仕組みで校務ができること、データの安全管理も図って不安なく管理できる点などに魅力を感じ、参加を表明。学校業務支援システム部会タスクフォースのメンバーとして帳票の統一などに関わった。統一で特に困難だったのが、通知表と保健帳票、調査書の3つ。すべての学校の通知表を集めて比較した。C4thはパーツを入れ替えて通知表を作成できるので、どのようなパーツを用意すべきかを検討した。
保健帳票については、県の医師会、歯科医師会、学校保健会養護教諭部会と協議して合意を図った。調査書は、高等学校課や私立高等学校と毎年度協議してシステムに反映している。【講師】鳥取県情報政策課・県庁デジタルイノベーション戦略室長・下田耕作氏、鳥取県日野町教育委員会教育課長・砂流誠吾氏
【第59回教育委員会対象セミナー・松江開催:2019年8月23日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載