8月9日、第58回教育委員会対象セミナーを京都市内で開催。関西地区の教育委員会や学技教員などが講師として、「新たな学び」に向けた準備としての環境整備や授業アイディアについて共有した
1人1台のタブレット端末活用を始めて7年目である長野教諭は、パフォーマンス課題やeポートフォリオも進めている。「深い学び」を実現するための思考ツールとICT活用について、国語の事例を報告した。
ICTが持つ特性や強みは①時間や空間を問わず、音声・画像・データなどを蓄積できる、②相互に情報の発信・受信のやりとりができる、③多様で大量の情報を「収集、整理・分析、まとめ・表現する」ことができる、の3つ。「深い学び」を導くために、見方・考え方を働かせる思考力・判断力・表現力で、知識の理解の質の向上を図り、ICTの特性を関連づけて単元を設計。単元設計で重要なことは、習得・活用段階での必然性のある課題の設定である。
6年国語「やまなし」(宮沢賢治)の授業では、見方・考え方を働かせるパフォーマンス課題(活用)を設定し、見方・考え方を働かせた作品世界の解釈を行った。学習過程では、デジタル思考ツールを使い、「やまなし」の世界観をベン図、ピラミッドチャート、イメージマップ、フィッシュボーン図にまとめる「思考画面」を作成。児童は「思考画面」の蓄積により、これまでの学びを振り返ったり、他の児童と思考を共有したりしながら話し合い、活用課題の解決に挑んだ。デジタルは思考過程を蓄積しやすい点がメリットだ。
一方でこの方法は、思考の共通化を招くこともある。これを防ぐため、「習得」の段階で「活用」のためのイマジネーションを保証する「創造(クリエイション)」の学習過程を開発している。「深い学び」の1つとして整理されている「思いや考えを基に創造している」点に重点を置くことが大切であると考えている。
本校では1時間の振り返りで、「目当てに対してどのように学習を進めたか」をタイピングして提出している。6年生では1分間に100文字前後までにタイピングスキルが向上した。これは「思考速度」と同等で、自分の考えをシームレスに打ち込んで表現できる速さだ。
5年生は4月の時点では6分間で100文字前後だったのが、7月の時点で250文字前後に向上した。
今の時代の子供にとっては、ICTがあるのは当たり前で、それを生かすことは大前提。コンピテンシーを育成するために不可欠なスキルである。教員は、ICTを活用する際にはコンピテンシーを意識し、コンテンツを的確に把握して学習過程の中にしっかりと入れ込むことが重要だ。【講師】京都教育大学附属桃山小学校 ICT活用研究主任・長野健吉氏
【第58回教育委員会対象セミナー・京都:2019年8月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月9日号掲載