8月9日、第58回教育委員会対象セミナーを京都市内で開催。関西地区の教育委員会や学技教員などが講師として、「新たな学び」に向けた準備としての環境整備や授業アイディアについて共有した
小学校のプログラミング教育開始まで1年を切った。2021年度から中学校、2022年度から高等学校で新しい学習指導要領が実施される。大きく学びが変わり、情報活用能力を高めることが求められる。鹿野氏は「テクノロジーの進化に合わせて社会は変わり、求められる資質・能力も変わる」と話した。
キーワードは「Societey5・0」だ。現在はPCなどを使う技術が求められるSocietey4・0の情報社会。対してSociety5・0ではイマジネーションとクリエイションが求められる。
イマジネーションはAIやIoTなども含めて「これとこれを結び付けたら新しい価値を生む」などアイディアを考え出す力。クリエイションは、新しいアイディアを実現する力。双方の能力がこれからの社会で活躍するための力である。さらに、変わりゆく社会で必要な力とは何かを考え続けることそのものも、求められている。
技術の進展により、なくなる仕事もあれば、新しく生まれる仕事もある。定型的にこなすだけの仕事はAIやロボットに取って代わられ、創造性を必要とする仕事や人と関わる仕事などが残ると言われている。自ら課題を見つけ、AIなどを活用して、それを解決できる人材を育むには、「AIには何ができて、何ができないのか」を理解していることが前提だ。そうしたことが子供たちに分かるように、情報活用能力を小・中・高等学校で系統立てて教えていく。
小学校では教科の学習の中でプログラミングを体験し、中学校では技術・家庭科で、従来から行われている「計測・制御」のプログラミングに加えて、「ネットワークを活用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」を追加。高等学校では、必履修科目「情報Ⅰ」で全員がプログラミングを活用する。
2018年度には、約半数の小学校がプログラミングの授業を実施した。準備を進めている学校を含めると90%以上だ。2019年度は多くの小学校でプログラミング教育が行われているはずだが、プログラミングで何をやるか決まっていない学校も多い。
中学校は、これまで高等学校で取り組んでいたデジタル化、システム化、情報セキュリティなどの内容も扱うようになる。
教員のスキルやネットワークなど様々な問題はあるが、教育委員会は予算を確保して、学習指指導要領の内容を教えることができる教員を研修等で育ててほしい。
現在、高等学校の「情報」は「情報の科学」と「社会と情報」の2科目から選択するため、プログラミングを学ぶ生徒は20%程度。新学習指導要領では必履修科目「情報Ⅰ」で全員がプログラミングを学ぶ。さらに、発展的な選択科目「情報Ⅱ」も設けた。
産業教育については、より専門的な科目群で構成される専門教科「情報」を設置。これにより情報セキュリティ、情報デザインなどで身につけた力を仕事に生かす生徒も出てくるだろう。
和歌山県では、2019年度から小中高等学校でプログラミング教育を行っており、三重県では、県立亀山高等学校が新科目「情報セキュリティ」を先行実施している。
プログラミングの授業が始まると教員よりも「できる」児童生徒が教室にいるかもしれない。子供たち同士が教え合うことも想定しつつ授業を進めること。それが教員の助けとなると同時に、教えた子供自身の成長にもつながる。【講師】文部科学省 教科調査官・鹿野利春氏
【第58回教育委員会対象セミナー・京都:2019年8月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月9日号掲載