8月9日、第58回教育委員会対象セミナーを京都市内で開催。関西地区の教育委員会や学技教員などが講師として、「新たな学び」に向けた準備としての環境整備や授業アイディアについて共有した
滋賀県総合教育センターでは、協働・双方向型の学習活動が活発となるよう、2017年度ICTプロジェクト研究で「学びのデザインマップ」を作成。開発に携わった松原氏は研究校の成果を語った。
ICTプロジェクト研究では、学習活動が活性化するICT活用を「+ICT」と呼んでいる。
「+ICT」のためには、授業者が授業展開をイメージしながら様々なアイデアを膨らませること、イメージしたアイデアを効率よく整理することが重要と考え、思考ツールの1つである「イメージマップ」の手法を取り入れることとした。
イメージマップとは、中心のキーワードからイメージを広げていくものだ。
例えば、中央に「リンゴ」と書き、その周りに連想するイメージ「赤い」「甘い」「青森県」などを書き出していく。
この手法を活用して、授業設計に生かす「単元計画のデザインマップ」と「授業計画のデザインマップ」の2つのイメージマップを作成した。
「単元計画のデザインマップ」は、単元を通して児童生徒につけたい力を基に、イメージを可視化してまとめるツール。それぞれの学習活動で「+ICT」となる場面を考えるもので、単元を通した「+ICT」により、協働・双方向型の学習が活発に行われているかを確認。過度にICTが使われている場合は減らし、不足している場合は追加するための指標だ。
「単元計画のデザインマップ」で単元全体の構想を考えた後は、「授業計画のデザインマップ」で、それぞれの時間の授業計画を立て、「+ICT」をより詳細に検討。児童生徒の予想される反応やつまずきも予想し、支援が必要な場合は、その内容も書き込んでいく。
研究協力校の12校のうちタブレット端末の導入校は5校だったため、導入されていない学校にはタブレット端末や無線LANのアクセスポイント、保管庫などを貸し出して検証した。
最初は無線LANがつながらないなどのトラブル等が発生する。
そのような経験も授業計画のデザインマップに盛り込み、トラブルの際にどのように対応するのかも授業設計に反映した。
高等学校の公開授業では、「古典」で、タブレット端末で絵巻物の画像を細部まで確認して、生徒に自分なりのストーリーを考えさせるようにしていた。
小学校の体育では、捉えにくい自分の体の動きをタブレット端末の動画機能で撮影。動きのポイントを示しながら、動画を比較できるアプリで手本と自分の動きを比較。学びが深まる「+ICT」とした。
「学びのデザインマップ」を用いて、ICTの有効活用を意識した授業設計を行うことで、教員の授業設計力と授業力が向上し、協働・双方向型の授業が実現した。
今後の課題は、授業の振り返りの場面などで広げ・深めた考えを整理・集約し、新たな課題へとつなげること。
「学びのデザインマップ」は作成して終わりではなく、随時修正していく必要がある。これらの研究成果は滋賀県総合教育センターのWeb(www.shiga-ec.ed.jp/www/index.html)で公開。「学びのデザインマップ」もダウンロードできる。【講師】滋賀県総合教育センター 2017年度研究員・松原功明氏
【第58回教育委員会対象セミナー・京都:2019年8月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月9日号掲載