第55回教育委員会対象セミナー福岡を2月8日、第56回同セミナー名古屋を2月15日に開催。教育委員会や教職員などが参集し、熱心に聴講した。
統合型校務支援システムやタブレット端末活用などを進めている三重県いなべ市教育委員会の安藤氏は導入の経緯と成果を語った。
校務支援システム導入以前、指導要録はExcel管理でセキュリティ面などの不安を抱えており、平成25年度より統合型校務支援システムの導入を検討。小学校1校、中学校1校のモデル校を設置し、学校、教育委員会、行政からなる校務情報化部会を設置して取り組んだ。本部会ではPCに詳しい教員だけではなく、様々な職種の教員も参加した。
平成26年にプロポーザル方式で「EDUCOMマネージャーC4th」を選定。仮運用時は連絡掲示板、個人連絡、書庫、予定表、児童生徒名簿などを、平成27年4~6月の本稼働時は出席簿、月末統計表、通知表、指導要録など、使える機能を段階的に増やした。
運用ルールも変更。それまでの紙メインのルールからデジタルを想定したルールとした。紙の時は二重線を引いて変更していたが、デジタルでは古いデータを保存した後、新しいデータを打ち直すこととした。導入前はWindowsのメールソフトを使っていたが、導入後は校務支援システムの連絡機能の活用をルール化した。
校務支援システム導入から半年後のアンケートでは「手間が減ってない」「成績管理はやりにくくなった」など否定的な意見が多かった。その後、活用に慣れるにしたがって「出席簿のシステム化が進んで便利になった」「セキュリティ面からも安心して使える」など肯定的な意見が増え、否定的な意見は減った。
仮運用時、校務支援システムの掲示板機能の既読率は2週間で20%未満だったが本稼働後は60%まで上がり、平成30年度は約80%に高まった。掲示板を読むことが教員にとって日常化するなど校務支援システム活用が日常的になっていることがわかる。
平成27年度にPC教室の機器更新時期に合わせ、情報提示や情報共有といった授業での活用もめざし、タブレット端末だけでなく、電子黒板も一緒に設置の検討を開始した。教育委員会や行政、ICT機器導入業者、ICT支援員派遣会社からなるICT定例会を設置して検討を開始。操作性や安定性、バッテリーの持ちなどの理由からⅰPadに決定した。
平成28年度にICT研究指定校を設置。5、6年生は1人1台、4年生以下は共有として検証を開始した。
市では、校務用PCは教員用ネットワーク、電子黒板やタブレット端末は生徒用ネットワークとセキュリティ上の問題から分けている。職員室のPCで作った資料を電子黒板で提示するにはUSBメモリを利用する手間がかかった。そこでNetwork Attached Storage(NAS)(ネットワークに接続された記録装置)に注目。NASを介して校務用PC、電子黒板、タブレット端末でデータ共有を行い、運用上の課題を解決した。
ICT支援員も導入し、教員からは「授業に集中できる」と好評を得ている。
これら検証を経、平成30年度には全小学校にモデル校と同様の環境を整備。さらに電子黒板の活用が高まるよう、全学年に算数のデジタル教科書を導入した。
活用計画に合わせて研修会も実施。講師はICT支援員が務める。研修会では受講カードを用意し、研修の内容をどれだけ理解できたかチェックしている。
授業の内容を紹介した「ICT活用事例シート」を教員が作成し、事例共有サイトにアップして共有している。
小学校教諭へ実施したアンケートでは、平成27年度はICT機器を日常的に使っているのは6%だったが、本整備後は電子黒板41%、タブレット端末16.2%であった。今後の課題として、タブレット端末導入による効果を数値化してエビデンスを示すこと、タブレットを使うだけの段階から、教科の目標達成のため効果的な活用を目標としていく。【講師】いなべ市教育研究所 所長補佐兼指導主事 安藤正一郎氏
【第56回教育委員会対象セミナー・名古屋:2019年2月15日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年3月4日号掲載