第55回教育委員会対象セミナー福岡を2月8日、第56回同セミナー名古屋を2月15日に開催。教育委員会や教職員などが参集し、熱心に聴講した。
鹿野教科調査官は新学習指導要領で求められる学習の基盤「情報活用能力の育成」について説明。「時代が変われば必要とされる力も変わってくる」と語った。
Society5・0では、自ら課題を見つけ、AIなどを活用して課題を解決できる人材が必要とされる。そうした人材の育成にプログラミング教育が大きな力を発揮する。想像力や創造力なども必要とされる力だ。子供たちが自ら問題を発見し、解決するプロセスを授業の中心に据えていかなければならない。
新学習指導要領では「自己調整力」も重要視されている。自らの学習状況を把握し、学習の 進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価する力だ。
情報活用能力は、「教科横断的な視点」で育むべき資質・能力で、「プログラミング的思考」もこれに含まれる。問題を見いだし、意図した一連の活動を実現することが「プログラミング的思考を働かせる」こと。必要な動きを分けて考え、動きに対応した命令を選択し、組み合わせる。最初はうまく動かない。そこで試行錯誤しながら継続的に改善するなど繰り返し学習することで高次な力が育まれる。
文部科学省では、小学校でのプログラミングに関する学習活動をAからFまで分類し、実践は、小学校を中心としたプログラミング教育ポータル()で紹介している。
中学校は「情報の科学的な理解」としてネットワークやコンピュータの仕組みなどを学ぶ。さらに新学習指導要領では「ネットワークを活用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」が新たに追加された。技術・家庭の技術分野87・5時間の4分の1程度が情報で、この限られた時間で学ぶことになる。
高等学校の新学習指導要領では全員が「情報Ⅰ」を履修し、プログラミングやコミュニケーション、情報デザインについて学ぶ。情報デザインとは情報を受け手に対して分かりやすく伝えたり、操作性を高めるための基礎的知識や表現の方法だ。ポスターやWeb制作などの実習を通して実践的な力を育んでいく。
「情報Ⅱ」では技術が進展した先の社会を考え、データを分析し、データに基づく現象のモデル化を行い、機械学習の基礎などを学ぶ。
「情報Ⅰ」で国民として必要な素養を育み、「情報Ⅱ」ではより高度なことを学ぶという流れになっている。
今年度末には「情報Ⅰ」の研修資料を出す予定。2022年の授業開始に備えて教育委員会等には計画的に対応を進めてほしい。
授業を「教える」から「学ぶ」に変えること、「教員の授業設計能力と適切な評価と指導」が必要だ。「協働と共創のためのソフトウェア環境」を支える「ICTなどのハードウェア環境」や「十分なインターネット接続速度」も求められる。
これらが総合されて「深い学び」につながる。【講師】文部科学省教科調査官・鹿野利春氏
【第56回教育委員会対象セミナー・名古屋:2019年2月15日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年3月4日号掲載