第55回教育委員会対象セミナー福岡を2月8日、第56回同セミナー名古屋を2月15日に開催。教育委員会や教職員などが参集し、熱心に聴講した。
長崎南山中学校・高等学校は、創立66年のカトリックの男子校だ。生徒数は中学校181名、高校726名。長崎市周辺の男子人口が平成19年をピークに減じるなか、生徒数を維持・増加するために、ICTを活用した授業改善、新しい学力観への対応を進めた。同校の取組を中島主任が話した。
本校ではICT活用の柱を次のように決めて全教職員の共通認識を図った。
①授業活用、②生徒の個別学習応、③生徒、教員、保護者間のコミュニケーションツール、④進路指導の深化、⑤校務負担の軽減
特に、コミュニケーションツールとしてのICT活用効果に注目。
情報共有のプラットフォームとして、クラウド教育支援サービス「Classi(クラッシー)」の活用を決め、クラウドサービスを円滑に利用するために教職員・生徒用タブレット端末983台を平成26年度末に整備。利用者情報の登録(MDMを利用)、全職員対象説明会の実施、Classiへの生徒情報データの登録、生徒対象タブレット端末説明会及び端末の配布などを経て平成27年6月から運用を開始した。
職員の毎日の連絡はClassiの連絡掲示板を使用することとし、一気にペーパーレス化と連絡事項の共有が進んだ。
Classiはタブレット端末に教材やテストを一斉配信できる。
選択式の問題であれは瞬時に自動採点・集計され、教員端末に結果がグラフで瞬時に表示される。試験結果はCSVデータに変換して、過去の成績データと比較でき、学習記録への教員や生徒のコメントも記録できる。
クラスやグループ活動、部活動や生徒会などのグループを設定してグループごとの連絡も可能だ。
初年度は運用ルールの見直しや保護者からの質問への説明など管理担当者に専門性が求められるなど負担があった。
そこでシステムエンジニアを採用。校内の情報機器やネットワーク管理、サーバーの保守点検、成績処理システムのメンテナンス、タブレット端末などの全体管理を統括する。
管理はシステムエンジニア、運用は教員が行う体制となり、スムーズな運用が可能になった。生徒の活動履歴や授業で学んだ内容や感想などの入力も習慣化してポートフォリオも作成。生徒は、入力した内容を時系列で確認でき、特に優れた学びをグループ機能で共有。他者の視点や考え方と比較し、学びを深めている。定期考査や模擬試験結果を記録・振り返り、自分の弱点を認識し、次の学習の目標設定に生かしている。
ポートフォリオは、生徒情報が一元管理できる「生徒カルテ」機能と連携。生徒個人の学びを全職員が確認できるプラットフォームだ。複眼的に指導できる資料となり、三者面談用の資料作成に活用。生徒個人が日頃の学びや考えも話しやすくなり、保護者とのコミュニケーションも深まった。
今後は、ポートフォリオ作成が目的化しないようにさらに活用方法を改善していく考えだ。【講師】長崎南山中学校・高等学校企画構想部主任・中島寛氏
【第55回教育委員会対象セミナー・福岡:2019年2月8日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年3月4日号掲載