第55回教育委員会対象セミナー福岡を2月8日、第56回同セミナー名古屋を2月15日に開催。教育委員会や教職員などが参集し、熱心に聴講した。
中教審「学校における働き方改革に係る緊急提言」(平成29年)では統合型校務支援システムの導入促進が明記され、都道府県単位での統合型校務支援システムの共同調達・運用に向けた取組を推進することが重要であると強調されている。なぜ“統合型”校務支援システムなのか。昨年まで鹿児島市教育委員会に所属して3年間校務支援システムの導入・運用に関わってきた木田氏は、統合型校務支援システムの失敗しない導入方法について報告した。
統合型校務支援システムは、1度の入力で出席簿、指導要録、通知表など関連する複数の帳票すべてにデータが転記され、作業が1回ですむ。例えば担任が出席簿に、養護教諭が保健日誌に入れる作業をそれぞれ行わなくてすむ。
成績処理や出席日数が自動算定されるので、計算ミスや転記ミスもなくなる。
グループウェアのメリットも大きい。鹿児島市のシステムでは、中央に行事・連絡事項が掲示され、右には出退勤時刻、下段には児童生徒の欠席情報、出張などの職員の状況欄が表示されている。保護者からの遅刻や欠席の電話を受けた時点でグループウェアに入力すれば情報が共有できる。特別教室を使う、プロジェクターを使用するなど施設備品情報も共有できる。
統合型校務支援システムの導入効果については、各自治体の調査で大体年間100~230時間程度業務にかかる時間を削減できたという結果が出ている。鹿児島市の調査では、1日当たり、通常期で中学校で35分、小学校で32分、学期末などの繁忙期で中学校65分、小学校70分の削減効果があった。
実際に導入するときに失敗しないためにはいくつかポイントがある。各メーカー作成の「パッケージ型」か自由度のある「独自開発型」どちらの整備をするかが最初の課題になるが、独自開発型は自由度はあるが、コストがかかり、設計から始めるため使えるようになるまで時間がかかる。
そこで、プラットフォームが共通化されるという点で、都道府県単位(あるいは広域)での統合型校務支援システムの共同調達・運用が推奨されている。導入時のスケールメリットやシステムの広域管理・運用が可能なこと、教職員が県内で異動しても同じシステムを使えるなどが大きなメリットだ。
導入時には、カスタマイズは極力せず、システムに市町村の帳票を合わせる方が問題は少ない。カスタマイズすればコストがかかり、システムエラーのリスクも発生する。
導入後、システムの利用率を高めるための工夫として、移行期間を設けた後は極力例外を設けず、速やかに完全移行すること。早く使うほど早く活用効果が出る。そこで利用機会を増やすため、校務端末のスタートアップをグループウェアにして立ち上げると表示されるようにする、校務用PCのログオン・ログオフで出退勤時刻を打刻されるようにするなどシステム活用を必須とする運用・環境にする。マニュアルは紙で配布するのではなく、要点を押さえたPDFや操作動画を作成して,各端末に入れるなどいつでも参照できるようにする。
研修はまず、管理職研修をしっかり行い、校内全体の事務的作業の見直し・改善についてイメージを持ってもらう。次に、校内リーダー研修により、校内研修につなげる。
「外字」の対応は必須。自治体が使用している「住民基本台帳」等の外字フォントを適用することもできる。予算があれば、資産管理システムの導入も検討したい。【講師】鹿児島県総合教育センター 情報教育研修課・木田博氏
【第55回教育委員会対象セミナー・福岡:2019年2月8日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年3月4日号掲載