第55回教育委員会対象セミナー福岡を2月8日、第56回同セミナー名古屋を2月15日に開催。教育委員会や教職員などが参集し、熱心に聴講した。
武内小学校は1~6年生と特別支援学級各1クラス、全校生徒135人の小規模校だ。官民一体学校として民間塾である花まる学習会や地域との連携に取り組んでいる。末次校長は同校の特徴の一つであるICTの学習活用について報告した。
武雄市では電子黒板は全普通教室に整備済で、全校に1人1台のタブレットPCを整備している。ソフトバンク社会貢献プログラムによりPepperも全小中学校に貸与を受け、プログラミング学習に活用。主要教科の指導者用デジタル教科書も全学年整備済。学習者用デジタル教科書も国語や算数などを導入して5年生が活用している。授業支援ツールはスタディネットやスタディノート(シャープ)を活用。ICT推進員は各校に一人配置。週3日、1日6時間の勤務だ。
武内小学校では、武雄市のICT環境を活用して協働的な学びの向上に取り組んでいる。目標は、相手の考えに寄り添い受け止める「共感力」、比較分類関連させながら話し、聞くことができる「対話力」、自分の考えや学習のねらいを深く理解する「深化力」の育成だ。さらにこれら3つの力を1~5レベルまで定義し、ICTの活用場面を明確にしている。
武雄式反転授業については一部アレンジを加えて「武内小式反転授業」スタイルを確立。市教委主導で市の教員と企業が協働し宿題用の動画として作成した反転学習用コンテンツだが、教科によっては「教えすぎている」と感じたことから改善した。学校で、あるいはタブレットを持ち帰って、考えたくなるような導入を動画等で提示。そこに示された課題について、児童は自宅でやり方を考えてくる。教員は次の日、児童の考え方を学校で回収して授業の構成を考え、協働的な学びにつながるようにしている。学校では、家庭で各自が考えてきた方法をグループで話し合う。タブレットPCに考え方を記入して電子黒板に送信・提示して「友達タイム」の中で比較検討するという流れ。すべての児童が「自分の考え方」をもった状態で授業を展開できるようになってきている。
教員の働きかけ方についても重視。そのひとつが「切り返しの発問」による「思考の往還」だ。「思考の往還」とは、児童から出た考えを、個からグループ・全体へ、また、全体からグループ・個へと行き来させ、考えを深めさせることである。児童の考えの中から、協働的にもっと深く考えさせたいものを焦点化し、ゆさぶりの発問と共に再び児童に考えさせ、話し合わせる。その発問を「切り返しの発問」と呼んでいる。
360度アクションカメラも活用。児童の話し合いの様子も記録して分析を試みた。
道徳ではタッチアナライザー機能を活用して皆の考えを電子黒板に表示。視覚化することでなぜそう考えたのかについて話しやすくなる。タッチアナライザーの活用で工夫した点は、皆との話し合いや意見交換により自分の考えを変更した児童はすぐに変更して良いことにした点だ。誰の意見によって考えが変わった児童が多いのかがすぐにわかり、授業が活性化した。
今後は、これまで算数に注力してきたICT活用を多様な教科に展開することが目標だ。また、これまでは教員主導のICT活用であったが、児童主体の活動をより一層活性化させることが課題である。【講師】武雄市立武内小学校校長・末次貴浩氏
【第55回教育委員会対象セミナー・福岡:2019年2月8日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年3月4日号掲載