第55回教育委員会対象セミナー福岡を2月8日、第56回同セミナー名古屋を2月15日に開催。教育委員会や教職員などが参集し、熱心に聴講した。
熊本市では熊本市教育センターの中に今年度、教育情報室を設置し、昨年夏から教育ICTの整備を開始。2020年までに3年計画で全普通教室に65型の電子黒板と実物投影機、3クラスに1クラス分のLTEタブレット端末(iPad)計2万3460台を小中学校全134校に整備する。その理由と目的を山本指導主事が報告した。
熊本市では、タブレット端末を平成30年9月に先行導入校の小学校16校、中学校8校で、平成31年4月に小学校76校で運用を開始。さらに2020年1~4月に中学校34校で運用を開始する。教員と特別支援学級の児童生徒には1人1台の整備だ。普通教室でもICTを活用してプログラミング教育も実施できる。
この大規模整備に踏み切った理由の1つは、平成28年の熊本地震だ。熊本市は震度6弱と6強の2回、大きな揺れがあり、地区により学校も建替え。児童生徒に「学校に行けないかもしれない」というリスクを負わせてしまった。今後、どう熊本市を再建していくのかを考えた時にICT教育の充実が必須と考えた。タブレット端末、電子黒板、実物投影機を活用することにとどまらず、これらの機器やシステムで、子供たちが未来を作る担い手となる学びを行っていく教育を期待して整備内容を考えた。
機器やシステムの選択では、ICT機器が手軽な道具として活用できることを第一に考え、手軽さを重視した。テストの点数だけを向上させるのではなく、子供たちの学習意欲や創造力、表現力を養うことに目を向けながら活用を進める方針だ。
整備の中心となった大西一史市長は「これだけ大きく社会構造が変化していくなか、ICT活用は必須。今まで教員が提供してきた様々な教育手法を最大限に生かしながらICT機器を活用してより深い学びを実現していただきたい。そのためにも活用方法を教員によく研究していただき、教育的効果を発揮してほしい」と語っている。
これまで、熊本市のICT整備は政令指定都市の中で最後から2番目だったが、今回の整備で政令指定都市ではトップレベルになる。
また、学年・教科・単元などにおけるモデルとなるカリキュラム開発を熊本大学、実社会とつながる実践的なプログラミング教育の展開に向けた学習機会の提供を熊本県立大学、ネットワークのサポートや研修のサポートをNTTドコモが担い、産官学が連携して取り組んでいる。
ICT活用を促進する研修ではまず悉皆で管理職研修のほか、先行導入校24校のICT活用推進リーダーや全教員を対象にした導入研修を実施。校内の推進リーダーと共に、教科、教務主任、研究主任等を入れて教育情報化の推進チームで進めている。
LTEタブレットを導入した理由は、市の教育情報ネットワーク内にWiFiを整備すると設計に予算も時間もかかること、既存のネットワークに負担がかかること、トラブルが起きた際の対応やセキュリティの確保が難しいことなど。
LTEであれば、こうした問題がクリアになると考えた。子供たちは教室内だけでなく、教室外でどんどん活用している。【講師】熊本市教育委員会 教育センター指導主事・山本英史氏
【第55回教育委員会対象セミナー・福岡:2019年2月8日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年3月4日号掲載