11月2日、札幌市内で第103回教育委員会対象セミナーを開催。辰己丈夫教授・放送大学は生成AI利用を、佐藤和紀准教授・信州大学はクラウド活用について講演。北海道教育庁、発寒南小学校、緑が丘中学校はICT活用の取組を報告した。
旭川市立緑が丘中学校は今年度より、リーディングDXスクール事業の指定校として、校区の小学校と連携して学校DXに取り組んでいる。ICT環境はiPad端末とGoogleWorkspaceを使用。リーディングDX専用HPには授業や校務における実践事例や活用のヒントをまとめた「プチDX」、教材集やDX用語集などを掲載。
北海道旭川―学校DX:https://sites.google.com/gakumu.asahikawa-hkd.ed.jp/asa-dx
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まずは校務に関わるDXを進め、教員が端末に慣れるところからスタートした。
便利さを実感し、使ってみようという機運が高まったきっかけは日報をスプレッドシートに移行したこと。学年内の連絡メモとリンクさせ、全体や他学年の動きも一目でわかるようになった。
特に高評価を得たのは年度初めに家庭とやり取りする書類をFormsに集約したこと。三者面談、参観日、PTA学級役員、兄弟調査など学年や分掌に捉われずまとめて調査し回答を学級別に抽出。参観日の出席人数やPTA総会の委任状数も自動計算され、提出状況も一覧で確認できる。
紙の進路通信はGoogleサイトに移行して「進路Web」を開設した。体験入学のお知らせや奨学金情報、入試の手続きの日程、面接の練習の仕方などの情報を発信しており、体験入学の申し込みもWebからできる。
事務員の提案で部活動の特勤手当もスプレッドシートで共同編集。紙の受け渡しが不要でファイルに入力するだけで良い。他にもペーパーレス化に取り組み、4~9月の紙の消費が5万枚削減された。チャット活用も始まり、職員間の連携がスムーズになった。
授業実践も段階的に進めた。2021年度「A=提示」から始まり、22年度「B=1人1台端末の活用」、今年度は「C=協働編集」をテーマに実践に取り組んでいる。
数学科では担当教員がスプレッドシートでルート計算アプリを開発。生徒は紙で計算した後、アプリで答え合わせを行っていた。また、Meetの画面共有機能を使って、端末をサブ黒板として細かい内容を生徒の手元に映し出していた。
理科室のモニターは分配器を使って4画面用意。後方の生徒も見やすくなった。顕微鏡の画像を共有できるようになったことで、細胞分裂の写真をスライドで共同編集して分裂の順序に並べ替えるなど協働的な学びが進んでいる。
実験を行う生徒、動画を撮る生徒、結果を記入する生徒と端末によって役割が増え、1人ひとりが活躍する場面が増えた。撮影した実験動画をClassroomにアップすることで欠席した生徒も実験の様子を見ることができる。
スプレッドシートはセルに画像が埋め込めるため、関数を入れた一覧シートを用意すれば全ての班の結果を一目で見比べることができる。端末でレポートを作成すると色の変化も写真で残せて分かりやすい。
体力テストの結果もスプレッドシートに記入し3年間の成長をレーダーチャートで確認。1つのファイルに3年分を入力でき、成長を見比べやすい。得点基準表も同じシート内にあるため、生徒は点数を確認しながら取り組んでいる。
生徒の主体的な活用も進んでいる。「端末を使って卒業制作を作ろう」と生徒が発案し、iMovieで動画を作成して、アルバムや文集、保護者への手紙などをGoogleサイトを使ってホームページ風にまとめて限定公開。後輩に向けた面接入試のHowto動画も掲載した。
定期テスト前、学習委員会が作成する朝学習用の問題は今年度からClassroomで配信。生徒総会での反省で、紙の方が問題を解きやすいとの声を受け、Formsで問題を作成すれば解きやすいのではないかと生徒が提案し、現在はFormsで問題を作成している。
業務を効率化して授業や生徒にかける時間を増やし、子供たちが主体的に学べる授業を目指して、今後も学校DXに取り組んでいく。
【第103回教育委員会対象セミナー・札幌:2023年11月2日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載