11月2日、札幌市内で第103回教育委員会対象セミナーを開催。辰己丈夫教授・放送大学は生成AI利用を、佐藤和紀准教授・信州大学はクラウド活用について講演。北海道教育庁、発寒南小学校、緑が丘中学校はICT活用の取組を報告した。
北海道教育庁では教科でのICT活用を段階的に進めるため、道内の実践例を積極的に収集。ポータルサイトで共有を図っている。田野主任指導主事が子供主体のICT活用の取組を報告した。
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北海道教育庁では2023年10月、今後5年間の取り組むべき施策をまとめた「北海道学校教育情報化推進計画」を策定。ICTは進展が速いため、適宜改訂を視野に入れている。
高等学校では2022年度より1年生からBYODによる1人1台端末の活用が始まった。今年4月、授業における端末活用の目指すところを明示した通知を出し、授業において1人1台端末を日常的に活用するイメージを、生徒と教員の両視点で示した。生徒と教員、双方の活用のメリットを実感しなければ活用は進まない。
リーディングDXスクール事業の取組も進めており、旭川市教育委員会および北海道帯広柏葉高等学校と取組を共有して、効果的な実践例の横展開を図っている。
教科でのICT活用を段階的に進めるには、学校の組織的な取組を促進することが重要だ。
例えば、「各学級のICT活用場面を写真や映像で記録して教員間で共有」「成功事例だけでなく失敗事例も含めてクラウド上で共有」「域内の学校間で取組状況を共有し共通ルールを策定」「校務での積極的な活用が学校全体のICT活用につながる」といった学校全体の取組が効果的である。高校教員が域内の中学校の授業を参観し自校の活用の参考にする事例もある。
「ICT活用ポータルサイト」には効果的な取組事例のほか、小・中・高・特別支援学校別にICT活用のヒントを約450事例掲載した「Tips編」や、オンライン研修プログラム、2021年5月から発行している広報誌「GIGAワールド通信」なども掲載しているのでぜひ参考にしてほしい。
2022年度文科省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、本道の教員は、ICT活用指導力は平均的に高いものの、研修の受講状況が他の都府県と比べて低い状況にあった。そこで学校の要望に応じた研修支援や情報交換、資料の提供などを行う「ICTを活用した学びのDX事業」による研修機会の充実を図っている。管理職や担当者と協働しながら校内研修を支援し、好事例や研修資料を提供している。
ICTを活用した授業の目指す姿と、その実現に向けた具体的方策をまとめた「ICT活用授業指針」を2020年度に策定。方策は次の6つ。▼適切な情報活用能力の育成▼身近な道具の1つとしてのICT機器▼学びの質を高めるためのICT活用▼個別最適化された教育の実践▼子供の障がいの状況や特性に応じたICT活用▼教員の業務負担軽減と子供に向き合う時間の確保
情報活用能力の育成に向けて「学習活動の視点から見た情報活用能力一覧」をポータルサイトに掲載。実態に応じて変更できるようExcelで作成した。道内の学校でも、低学年も含め学校全体でキーボード入力の指導をしたり、端末のルールを子供と相談しながら決めたりと取組が進んでいる。帯広市では市図書館の電子図書を用いた朝学習に取り組んでおり、家庭でも読むことができる。地域と学校が連携して取り組んでいるところほど活用が進んでいる印象がある。
今後も1人1台端末を子供自身が目的に合わせて活用できるよう取り組んでいく。
【第103回教育委員会対象セミナー・札幌:2023年11月2日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載