教育委員会対象セミナ―を2月14日、福岡市で開催した。全国ICT教育首長協議会の横尾俊彦会長(多久市長)は協議会の活動と多久市の取組、鹿児島市学校ICT推進センターは教育データの利活用、敬愛小学校はBYOD端末の実践とAI活用、福岡市立西陵中学校は教員のICT活用率100%の取組について報告した。当日の講演内容を紹介する。
教員のICT活用率100%を実現している福岡市立西陵中学校(生徒数314人)の吉瀬竜二校長と教育センターの松下絵美指導主事、浦川和弥長期研修員は、学校全体で取り組むための工夫について報告した。
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本校で本格的にICTを活用しようと考えたのは、2020年のコロナ禍で一斉休校になった時期だ。教員同士で話し合い、夏休みの研修スケジュールを変更して、情報端末(Chromebook)の活用方法を学んだ。初めは分からないことも多く苦労したが、Google担当者からアドバイスを受けながら、粘り強く学んでいった。
20年の一斉休校時は、1人1台端末が整備されていなかったので、学習動画を作成し、学びの機会を作った。まずは3年生に、YouTubeで学習動画を配信。校長も積極的に協力し、担当教科でもある英語の学習動画を自ら配信した。5教科の予習、復習、文法ワークの解説等、3年生用の動画だけで約80本にのぼった。若手とベテランの教員が協力してICT活用に取り組んだことで、その後の教員活用率100%につながった。
21年9月に1人1台端末が整備され、すぐにオンラインオープンスクールを開設した。県内の高校生と質問や意見交換を行ったり、ニュージーランドの留学生と国際的な課題やそれぞれの文化の違い等を話し合った。情報端末がないとできなかったことが実現できたことで、教員自身が必要性と利便性を実感した。
学校と生徒の自宅をつなぐ遠隔授業にも取り組んだ。使用する機材やアプリケーション、授業の中で起動するタイミングや時間、マイクや表示する文字の大きさなど、注意することを略案(指導案)に記し、教員同士の共有を図った。
ICTを学習進捗の把握や主体的な学びの評価に役立てている。
アサガオが成長する仕組みと上手な花を咲かせるコツをGoogleスライドでまとめ、ポスターを制作し、実験・観察はレポートを作成するというパフォーマンス課題の授業を行った。自己評価シートの提出とフィードバックは、紙でのやり取りだと煩雑だが、データでやり取りすることで学習進捗が把握でき、迅速にフィードバックできる。ポスター制作も、途中のデータを保存しておくことで、改善した部分や向上した部分等が把握でき、ふり返りにも役立てることができる。
音楽では、1人1台端末を使って、期末考査を試みた。
校内放送で課題曲の伴奏音源を流し、生徒はクラス全員で、自分の情報端末に向かって歌う。記録した動画を各自が確認し、どのような気持ちを込めて歌い、工夫したのか、気をつけた点等を入力して送信する。生徒は一斉に歌うが、ヘッドセットをしているため、周囲を気にすることなく歌うことができ、録音した歌声も、周囲の歌声に紛れることなく、鮮明に聴くことができる。
自己のパフォーマンスを動画で記録することは他教科にも拡がり、よりよい表現にするためにはどうしたらよいか試行錯誤し工夫するようになった。またヘッドセットの使い方や教室の構造による音響の変化にも気づき、活用の幅や質を高めている。
21年度から生徒会活動の中で、ICT専門員会を立ち上げた。Googleスプレッドシートで教科連絡を行い、欠席者と情報共有したり、学習で活用できそうなサイトリンク付のポスターを作成する等の取組を行っている。
生徒も教員も、さまざまなICT活用に挑戦し、効果も見据えながら試行錯誤してきたいと考えている。
【第96回教育委員会対象セミナー・福岡:2023年2月14日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年4月3日号掲載