教育委員会対象セミナ―を2月14日、福岡市で開催した。全国ICT教育首長協議会の横尾俊彦会長(多久市長)は協議会の活動と多久市の取組、鹿児島市学校ICT推進センターは教育データの利活用、敬愛小学校はBYOD端末の実践とAI活用、福岡市立西陵中学校は教員のICT活用率100%の取組について報告した。当日の講演内容を紹介する。
北九州市門司区の私立敬愛小学校(児童数254人)は2014年からBYODで1人1台端末を整備し、今年で9年目を迎える。龍達也校長は、ICTを活用した授業の取組について報告した。
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本校ではBYODで入学時に情報端末(iPad)を各家庭で準備してもらい、アプリケーションも家庭でインストールを依頼している。授業支援ツールはロイロノートを使用。子供たちは情報端末を毎日持ち帰り、充電して学校に持参している。各教室にはプロジェクターとホワイトボード、AppleTVを設置。学校全館に無線LANを完備している。
自分で考え、他の人がどのように考えたかを共有し、考えるというプロセスを大事にしている。
1年生の国語の授業で児童は、動物たちの心情を吹き出しに書いて、送信する。教員はカードを確認し、全員で共有しながら授業を進め、対話的な学びにつながるよう心掛けている。
個別の児童に合わせた学習もICTを活用している。本校では漢字検定や英語検定実施の1週間前に朝学習で、自分が受検する級の問題を学習する。子供によって受検する級が異なり、教員が教材を用意するのは時間を要する。そこで教材や関連問題をクラウド上の「資料箱」に入れておき、児童は自分が受検する級の問題を学習する。
思考を容易に可視化できるのもICTの強みだ。3年生の社会の授業では、スーパーマーケットの経営者となり、良い店にするにはどうしたらよいかという課題に取り組んだ。児童は家の人や大人に意見を聞き、「Xチャート」上に整理して考えをまとめ、自分たちのマーケットのキャッチフレーズを決めた。
他校や外国の方との交流には、Zoom等のオンラインツールの活用は欠かせない。6年生がスーダンで活動する医療団体と交流し、スーダンの水問題について、ペットボトルで作った「簡易ろ過装置」を送りたいという案が出た。壊れても使えるよう持続可能な方法を考え、ろ過装置の作り方の解説動画をアラビア語で作成し、さらにQRコードも作成した。
また、動画制作の手順がプログラミング学習とつながると考え、情報端末等のカメラ機能を活用。1年生は図工の時間に作ったおもちゃの遊び方の動画を制作。3年生の小数点の学習では、学校の中にある小数点を探し、撮影して発表した。
AR(拡張現実)も今年度から活用している。4年生から6年生のパソコンクラブでは、ARを簡単に制作できるアプリケーション「Reality composer」を使って、本来存在しない物体が実在するように見える動画作成に挑戦した。ドミノが当たって倒れる際、どのように倒れていくかをグループで考え、「画面上」でドミノを倒しながら動画を作成した。
漢字や英単語の反復学習をサポートし、記憶を定着させるアプリケーション「Monoxer(モノグサ)」を次年度から本格的に活用する。端末に文字を書いて練習する。はじめは画面になぞり文字や書き順のガイドが出ているが、繰り返し練習すると白紙の状態になる。
英語のスピーキングでは、発音学習のアプリケーション「ELSA」を活用。表示された英単語や英文を音読すると、AIが発音を自動判定し、発音が間違っている箇所をアラートで指摘する。
AIを活用した学習は今後さらに広がるだろう。人による指導とAIの利点を組み合わせた指導が効果を発揮する。子供たちの表情を読み取りながら理解を促すことは教員の役割である。
学校で学ぶ目的は、社会で活用できるスキルを身につけることだ。子供たちが集まって色々な意見とふれあい、交流しあって1つのものを創造するためには、ICT機器が重要な役割を果たす。
本校での6年間の学びが、未来を生きる力につながればと考えている。
【第96回教育委員会対象セミナー・福岡:2023年2月14日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年4月3日号掲載