8月1日、愛媛県松山市内で第90回教育委員会対象セミナーを開催。講演の一部を紹介する。
愛光中学・高等学校のICT推進室長でGoogle認定イノベーター&トレーナー及びロイロ認定ティーチャー&授業デザイントレイナーでもあり、ICT活用に関する著書も上梓している和田誠教諭は「ICT教育成功の秘訣は、クラウドとマインドだ」と話す。
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2017年から中学校及び教員が1人1台のiPad活用が始まった。2020年からは高等学校でChromebookを導入し、Wi―Fi環境も整備。GoogleWorkspaceを使った組織づくりを行い、少しずつ授業感が変わり、新しいチャレンジが始まった。
良いクラスや授業、教員集団など、良いと思った事例を基本に進めた。創立75周年に伴い校舎も昨年度建て替えた。
端末を1人1台に配備・活用していると、よく聞かれる質問がいくつかある。
1つめは「生徒は悪いことをしませんか」
悪意の有無にかかわらず、何かは起こる。フィルタリングを破るのに夢中になる生徒もいる。しかし中高一貫校であることもあり、また、ログが残っており追跡できることもあり、中学校3年生くらいから落ち着き、高校生になるとほぼない。
「ICTを導入して仕事は増えないか」という質問も多い。
一時的に増えるが長期的に見ると、トータルで仕事量は減り、質が上がっていく。
「授業時間が不足しないか」という質問もある。
それはやり方次第だ。授業デザインや単元デザインにより時間内で求められている力をつけることができる。
失敗しても安心してチャレンジできるチームを作ることは重要だ。これはクラス作りでも同様だ。
トラブルをどう捉えるのか、乗り越えられるサポートができるか。教員も生徒も、失敗し、それをリカバリーしながら成長する。組織内で乗り越えるためには意識して対話することだ。
3年前、Google認定イノベーターがGoogleJapanに集まり、Googleの企業マインドやデザイン思考について学んだ。
Googleの創業者であるラリー・ペイジ氏は「失敗しても構わない。失敗するなら早くしろ」という言葉を残している。失敗しないこと=チャレンジしていないことと考えており、失敗したら「おめでとう、次のチャレンジができる」とベルを鳴らしながら褒め合うそうだ。
学校も同様で、失敗を恐れてチャレンジしないことは、成長の芽を摘むことであると考えており、マインドの在り様が成功のポイントになる。
宿題や夏休みの自由研究は、ロイロノート・スクールやGoogleClassroomを使って自宅から提出。教員はその時点で確認できる。過去の教材・資料も共有ドライブに格納している。
教職員はClassroom上で情報共有しており、朝礼での口頭連絡が不要になった。
校務支援システムはクラウド上で共有できる仕組みを導入。保護者の欠席連絡がシステムに反映され、電話連絡がほぼなくなった。
保護者への連絡プリントもシステム上でPDFを配布。学年・学級の情報はGoogleサイト上に掲載している。各種調査や申込書等もGoogleフォームやカレンダーを使っている。また、コロナ禍で参観日を実施できなかった年は、保護者向けにリンクを送ってGoogleサイトで限定公開している。
他にも、良いと思った仕組みを積極的に試し、修正しつつチャレンジを続けている。
【第90回教育委員会対象セミナー・松山:2022年8月1日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年9月5日号掲載