8月1日、愛媛県松山市内で第90回教育委員会対象セミナーを開催。講演の一部を紹介する。
松山市教育委員会ではGIGAスクール構想等で小中学校に情報端末(WindowsOS)、Microsoft365、授業支援クラウドサービス(ロイロノート)、デジタルドリルサービス(小学校=タブレットドリル、中学校=eライブラリ)等を導入。この活用を広げる取組を小田浩範指導主事が報告した。
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常に「一歩先」の状況を意識して情報発信や研修に取り組んでいる。端末導入前の2020年8月、5つの専門部会(教科等ICT活用部会、情報活用能力育成部会、特別支援教育ICT活用部会、教職員ICTスキル向上部会、ICT環境整備部会)を立ちあげ、各部会から情報を発信していった。
例えば、教科等ICT活用部会は「教育の情報化の手引」を整理して「『松山の授業モデル』とICT活用(総括版・各教科版)」を作成し、教科等での活用方法を示した。情報活用能力育成部会は、「松山市情報活用能力育成目標」を策定。特別支援教育ICT活用部会では、特別支援でのICT活用例を「Seiたん通信」で発信するなどだ。
同年夏から、初任者研修、2年目研修、中堅研修等すべての経験研修でGIGA研修を開始。例年行っているICTスキルアップ研修は、この年より、参加者全員が校内研修を行うことを盛り込み、各校でICTに関する研修が実施されるようにした。
フォローアップが必要な教員向けに「GIGAスクール基礎研修」、愛媛大学教育学部の教授を講師とした「大学連携セミナー」も新設。研修では操作だけでなく、実際の授業がイメージできるような内容を意識した。
端末等導入直後の2021年3月には「すぐに」「どの教科でも」「誰でも」を目的にポイントをしぼった研修を実施。動画も制作し、センターのWebページに掲載し、いつでも視聴できるようにした。
2021年は、例年夏休みに実施していた経験研修等のICT研修を1学期に前倒しし、日常的な活用を目的に研修を実施。ICT支援員やALTにも研修を行った。
夏休みには、各校・教員のニーズに合わせた研修を実施。活用が進んでいない学校・教員向けには初級の活用研修、活用が進んでいる学校には教科の学びを深めるための研修を行った。
6月には新型コロナウイルス感染症による臨時休業等への備えとするとともに、持ち帰り学習の第一歩として、アカウントを家庭に持ち帰り、家庭の端末から自分のアカウントでロイロノートへの接続を検証。12月、市内全校で日常的な端末持ち帰りを試行。ほとんどの家庭が試行に参加し、2月より本格的に実施することとした。充電器を保管庫から取り外して家庭に置いておき、家庭で充電して端末をもってくるようにした。家庭に無線環境がない場合はモバイルルータを貸し出し。このモバイルルータは教育委員会特別プランで各家庭が契約している。
端末持ち帰りは、学校と家庭の学びをつなぐためのもの。各校からの報告を基に、教科ごとに「持ち帰りで効果のあった活用方法」を作成し、センターのWebページに公開している。
日々の持ち帰りにより、児童の荷物が重たくなる。そこで、家庭の端末からクラウドサービスにアクセスできるため持ち帰りが必須でないことや、宿題では使わない教科書を学校においておくこと等を周知。柔軟に対応している。
今年度は、他市からの転入や育休明け、苦手意識を持った教員、スクールサポートスタッフ、生活支援員、教育支援センター等、児童生徒に関わる人すべてを研修対象とした。端末を活用できる場所を拡大するため、松山市「タブレット活用のルール」等規定を改正。夏休み前には学校事務職員や放課後こども教室・児童クラブの職員にも研修を実施。関係各所で見守る体制作りに取り組んだ。
1年間の効果検証として調査も実施。「松山市教職員ICT活用指導力チェックリスト調査」では、95%以上の教員が学習支援クラウドサービスやデジタルドリルサービスの活用に前向きな回答をしている。端末持ち帰りについての家庭の理解も進んでいる。
通信環境についてもさらに改善。
通信の安定化を図るため、高性能APコントローラや、大規模校への通信安定化システムの導入を進めている。
今後も「教える授業」から「学び合う学習」への転換、特別活動等の授業以外での活用拡大に取り組む。
【第90回教育委員会対象セミナー・松山:2022年8月1日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年9月5日号掲載