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教育ICT

学びやすい仕組みを充実 超教科書ビューア~学習者用デジタル教科書・教材とパブリッククラウド活用

2020年12月7日
学習者用デジタル教科書・教材とパブリッククラウド活用

文部科学省調査によると、学習者用デジタル教科書の発行状況は2020年度の小学校は94%、2021年度の中学校は95%である。文部科学省では、学習者用デジタル教科書の普及とパブリッククラウドによる配信は、個人の学びやデータ収集・分析による学びの充実、障害等による学習上の困難の低減のために重要な要素であると考え、「学習者用デジタル教科書普及促進事業」を次年度に実施する方向で準備を進めている。それに向けて各教科書会社では、クラウドに対応した配信プラットフォームの仕組みを用意している。採用しているプラットフォームによりビューアの詳細にはそれぞれ特徴があることから、配信プラットフォームを提供している各社に特徴と今後の計画を聞いた。


軽快な動作が特徴の「超画像」、美しい組版にこだわった「超縦書」などの電子書籍ビューアを提供しているBPSと、新興出版社啓林館、帝国書院は、共同で「超教科書ビューア」を開発。2020年度版デジタル教科書・教材を提供している。大修館書店も2021年度版のデジタル教科書から本ビューアを採用。2022年度からは高等学校向けデジタル教科書の配信も予定。「超教科書ビューア」の特徴と開発のポイントについて新興出版社啓林館とBPSの担当者に聞いた。

次年度からクラウド版も

超教科書ビューアは「起動の速さ」を重視して開発。初期提示画面を軽くする、立ち上げ時の著作権保護のための暗号化や復号化処理を効率化するなど、様々な工夫により、起動やページ送りなどの際の迅速なレスポンスにつなげている。

個人でツールバーをカスタマイズできる

ツールの基本機能はスクロールして全表示でき、個別にアイコンを追加したり削除したりできる

ツールの基本機能はスクロールして全表示でき、個別にアイコンを追加したり削除したりできる

指導者用デジタル教科書、学習者用デジタル教科書のビューアは共通。ツールバー内をスクロールすることで、すべての機能項目のアイコンが閲覧できる。タブレットPCで操作する場合、階層を設けるよりもスクロールの方が迅速に操作できると考えた。

ツールバーのカスタマイズが個人でできる点も特徴。ユーザーはツールバー内のアイコンの配置を変えたり、使わない機能のアイコンを非表示にしたりできる。ツールバー自体の配置場所も、画面の左右か上かを選択できる。教員か児童生徒か、提示画面をタブレットPCから操作するのか大型提示装置上で行うのか、画面の大きさや教科、利き手などにより、必要なツールや使いやすい場所が異なるからだ。

この配置は学習履歴に保存されるので、教科やクラスごとに変えたり、学習履歴をエクスポートしたファイルを子供に配布して同じ使い勝手に整えたりすることもできる。

「超しおり」に授業の流れを登録

紙面上にファイルやWebコンテンツ、他の紙面などをリンクできる

紙面上にファイルやWebコンテンツ、他の紙面などをリンクできる

ツールの機能は豊富だ。

ペンやマーカーによる「書き込み」、画像や写真を紙面に貼り付けることができる「画像貼り付け」、様々な図形・スタンプの書き込みができる「図形」、文字を入力できる各種「テキストボックス」、紙面の「拡大・縮小」、暗記したい部分を隠す「暗記ペン」、紙面をキャプチャできる「スクリーンショット」、書き込みを種類別や個別に消去する「消しゴム」、コンテンツ内の別ページや外部のウェブサイトへのリンクを設定できる「マイリンク」、ノートページを提供する「バインダー」などがある。

フリーハンドの書き込み機能では、例えば地図帳上で、過去の地形写真の川や地形をなぞり、現在の写真に重ねて表示することなどができる。

校庭で見つけた植物の写真を張り付けるなどもできる。

独自機能「超しおり」は、ページ単位で、書き込んだり拡大・縮小したりしたページの状態を、1操作ごとに保存できる。ワークシートに解答を記入して「超しおり」に保存した内容をエクスポートしたファイルを相手に送り、相手がそれを自分の超教科書にインポートすることで、教員や子供同士で共有できる。教員は「教科書の一部を拡大」「問題の解答を表示」など、授業の流れを「超しおり」に保存すれば、指導用スライドを作成できる。

特別支援機能では、拡大機能、読み上げ機能、白黒反転機能、総ルビ表示のほか、リフロー表示では、書体、文字サイズ、行間を変更できる。

コンテンツ単位で、書き込んだ内容や最後に開いたページなどの状態を保存する「学習履歴」保存は、ブラウザ版・クラウド版では、ファイルをエクスポートする形で可能。アプリ版では自動保存される。

2021年度からクラウド版を提供

自治体や学校単位でライセンス管理するアプリ版(ローカルインストール版/学校ファイルサーバ版)、ブラウザ版(センターサーバおよび校内サーバ版)の提供に加え、2021年度よりクラウド版の提供も予定。Windows10iPadOS13以降、ChromeOSに対応。IEは動作保証の対象外。iOSAndroidでの表示最適化にも順次対応予定。

クラウド版は、各生徒に個別IDを発行し、ログイン状態でシリアルコードを入力することで、書籍が個人の本棚に格納される仕組み。GoogleMicrosoft等のアカウントとのシングルサインオンにも対応できるようにする。管理者によるIDの一括管理も可能。学習履歴管理は、当面はファイルのエクスポートおよびインポート方式。2021年度の前半にはサーバ保存にも対応予定。ローカルブレイクアウト回線にも対応できる。

外部サービス連携も

個別ID管理により、ID単位で、本棚、学習履歴、超教科書ビューアを採用した各教科書を連携して管理できるようにする予定。

外部学習サービスとの連携も対応予定。実現すれば、個別の学習データの効果的な活用が期待できる。

学習者用デジタル教科書・教材の個人購入が可能なWebストアの提供も検討中。

2020年度中に、デジタル教科書制作のためのオーサリングツールの提供も始める。

 

啓林館

予め付せんでワードを隠してある。暗記ペンは色を変更できる。指印はシミュレーション、A印は確認問題

予め付せんでワードを隠してある。暗記ペンは色を変更できる。指印はシミュレーション、A印は確認問題

小学校算数・理科・生活・英語と中学校数学・理科・英語で提供。「超教科書ビューア」共通機能に加え、各教科や販売形態に合わせたコンテンツを搭載した。

■学習者用デジタル教科書=教科書紙面と拡大表示や書き込み、読み上げ、保存などのビューア機能、特別支援機能、紙の教科書に掲載されているQRコンテンツを収録。

■学習者用デジタル教科書・教材=シミュレーション、スライド(解説動画)、フラッシュカード、動画、アニメーションなど各教科に合わせた学習者用デジタル教材。

■学習者用デジタル教材スクールパック=指導者用デジタル教科書(教材)のオプション。学習者用デジタル教材のみを校内フリーライセンスで使用できる。

指導者用デジタル教科書のワークシートコンテンツには問題の解答を出せるが、児童生徒用では答えを押すとパスワード入力画面が現れる。このパスワードはタイムスタンプと連動し、15分ごとに更新。次の時間、隣のクラスの子供が同じパスワードを入力しても解答を見ることはできないようにした。教員は教科書全体、同一ページ、ワークのみなどを選択してパスワードを解除できる。

中学校版で挑戦
ネイティブ音声も搭載

小学校版の読み上げ機能は機械音声。中学校版は、英語も日本語もすべてオリジナルのネイティブ音声を実装(共通ビューア実装機能は除く)。日本語の未熟な外国籍児童が日本語を学ぶ際、より適切なイントネーションの音声となるようにした。実際の活用を経て2024年度版の仕様を検討する。

2021年度版から小学校製品及び中学校製品で、クラウド版を提供。クラウド版は、1年間の年間使用料金を設定。学習指導要領のサイクルに合わせ複数年契約も対応できるようにする。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年12月7日号掲載

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