文部科学省調査によると、学習者用デジタル教科書の発行状況は2020年度の小学校は94%、2021年度の中学校は95%である。文部科学省では、学習者用デジタル教科書の普及とパブリッククラウドによる配信は、個人の学びやデータ収集・分析による学びの充実、障害等による学習上の困難の低減のために重要な要素であると考え、「学習者用デジタル教科書普及促進事業」を次年度に実施する方向で準備を進めている。それに向けて各教科書会社では、クラウドに対応した配信プラットフォームの仕組みを用意している。採用しているプラットフォームによりビューアの詳細にはそれぞれ特徴があることから、配信プラットフォームを提供している各社に特徴と今後の計画を聞いた。
「Lentrance(レントランス)」は、学習者を支える学びのプラットフォームとしてビューアの開発と配信の仕組みを提供しており、2020年4月から、デジタル教科書のクラウド配信方式の提供も開始した。社名は学び(learning)の入口(entrance)という意味だ。本プラットフォームを採用しているのは東京書籍など。その特徴をLentrance担当者に聞いた。
Lentranceプラットフォームの標準機能で、採用社は同じツールを利用でき、ペンツールや書き込み機能、消しゴム機能、マーカー機能、拡大・縮小ほかを搭載。紙面や動画上に書き込みができる。
紙面上に自分でリンクを張ったり、メモ書きも追加できる。
また、異なる出版社の教科書でも1つの本棚に並べて利用でき、種類の異なる教科書や教材の画面を半分割して左右に並べて表示することもできる。
特別支援機能はリフロー画面、フォント・行間調整、画面背景色及び文字色の変更、音声読み上げなど。DAISY教科書を導入していれば、本棚に追加して利用できる。
なおDAISYのクラウド配信対応は次年度以降を予定。
利用方式は3つ。アプリ方式(インストール版)、校内・自治体配信方式(サーバ版)、クラウド配信方式で、クラウド配信は2020年4月当初から開始。
クラウド配信では、ユーザはLentranceプラットフォームにアクセスしてデジタル教科書を閲覧する。PCのOSに依存せずクラウドを介して同期するので、学校でPCから書き込んだ内容を、通学途中や自宅などで復習することもできる。緊急事態宣言による休校期間にデジタル教科書・教材等のクラウド配信を希望する学校が増大し、5月末までに約6万人のユニークユーザが複数の教材にアクセスした。このときの経験は、クラウド配信と大量アクセスの際の運用・対応の知見として蓄積されている。
PC上で横向き表示の画面は、タブレットやスマートフォンでは縦向きでも表示できる。
Lentranceプラットフォームでは必要最低限の学習者情報による運用として個人情報に配慮している。
2020年4月より学校向けECサイトを提供。10月に一般向けサイトも公開し、Lentranceプラットフォームを採用している学習者用デジタル教科書・教材、教育系書籍等のデジタル版を購入できるようにした。学校では紙の教科書を使い、自宅では学習者用デジタル教科書で学ぶことも可能になる。
公開後、予想以上に購入が増えており、購入者からは「教科書を学校に忘れて宿題ができなかったとき、すぐに購入できてよかった」などの声も届いているという。
学校で学習者用デジタル教科書を導入していれば、本ストアで購入したデジタル教科書・教材とアカウントを連携して利用できる。今後も教育専門デジタル書サイトとして取り扱いを拡大する。
2024年度に向けた取組にも着手。教科書会社と連携し、文部科学省が公開した学習指導要領コードを用いた教材連携の準備を進めている。
どのページをいつ開いたのか、閲覧時間、書き込み履歴などの学習履歴活用機能についても検証中。教科書・教材発行者や教育工学の専門家と協力してどのようなデータを収集・分析・提供すれば良いのかについて検証を進め、新たなサービス開発に取り組んでいる。
Lentranceストアで東京書籍の学習者用デジタル教科書・教材を個人でも購入できる。東京書籍は、学習者用デジタル教科書を全発行教科で提供。学習者用デジタル教材は、地図、保健体育、英語を除く発行教科で提供。英語は学習者用デジタル教科書+教材の一体型のみ。アプリ版、サーバ版、クラウド配信版いずれも学習者用は同額で、販売形態は1つのみ選択できる。東京書籍によると、2020年11月時点で学習者用デジタル教科書の半数がクラウド形式を選択している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年12月7日号掲載