2月13日、名古屋市内で本セミナーを開催。教育委員会担当や教員が約100名来場した。
長野県大町市教育委員会は、2017年度から長野県のモデル市町村として、教職員の業務改善に取り組んでいる。学校教育課の担当者は「教育委員会がハード整備を進め、学校は、教育委員会が整備した環境でどのように働き方改革を進めるのか。双方の役割分担が重要」と語る。統合型校務支援システムは全県統一で調達する方向で、2020年4月から全県で展開を予定している。
教職員の時間外勤務を調査したところ、中学校は年度初め、月70時間を超えていた。小学校では自宅に仕事を持ち帰るパターンが多く、中学校では休日勤務の割合が多い。時間外勤務のうち4割近くを部活動に費やしている中学校もあった。
そこで長野県が2017年11月に策定した「学校における働き方改革推進にための基本方針」を受け、2018年3月に市としての取組を「大町市立学校業務改善ポリシー」にまとめた。このポリシーでは取組の柱として以下の5点を掲げた。①「勤務時間」を意識した働き方の推進、②教職員の意識改革、③業務の削減や分業化・協業化、④業務の効率化、情報化、⑤学校の業務環境の改善
教員に勤務時間を意識してもらうため、ICカードを使用した出退勤管理を2017年11月から市内全小中学校で本格実施。職員室の入口に端末を設置し、FeliCaカードを出退勤時にかざすことで勤務時間の適正な把握につとめた。午後8時以降に退勤している教員や月80時間を超える教員にはイエローカードやレッドカードを渡して注意を促す。
業務の洗い出しと仕分け作業も実施。教員が担う業務と他者ができる業務に分けた。行政側から依頼される、行事への参加や作文・絵画などの募集依頼は、教育委員会が間に入って見直しを進め、2018年度には一部参加を取りやめるなど内容を整理した。
部活動指導については、地域が受け皿となるよう2020年3月に大町市スポーツ推進計画を改定。中学生だけでなく市民も参加可能な総合型地域スポーツクラブを目指している。
学校で集めていた給食費は、2019年4月から教育委員会が徴収する公会計へ移行。その結果、債権債務の明確化が図れた。保護者が給食提供申出書を提出し、市が給食を提供することで、未集金に対して債権管理条例に基づいて厳格な法的措置を取ることができる。
留守番電話も導入。2019年6月から市内全小中学校で、平日の夕方6時から朝8時まで、土日祝日は終日、留守番電話にした。録音内容の86・1%は出欠席などの連絡である。日曜日に子供が熱を出しても留守電があれば、月曜の朝に連絡する必要はない。
業務の効率化を図るため、統合型校務支援システム「C4th」(EDUCOM)をクラウド上で運用。長野県は全県統一で共同調達・共同運用を実施した。県内統一仕様にすることで校務が標準化されるため学校を異動した場合も、同じシステムを使える。大町市ほか2団体をモデル地域として共通システムの構築を進めた。
導入に向けたワーキンググループを2017年に立ち上げ、県市町村自治振興組合が窓口となり、システムの調達手続きを行った。2019年1月に仮稼働し、同年4月からモデル地区で本稼働を開始した。
システムの活用にあわせて、これまでの運用方針や運用ルールを見直し。まず、当日の行事や日程、出張者などの情報を教職員間で共有していた日報を廃止。全教職員で同じ仕組みを活用することで効率化が図れることから、それまで個別で作成していたソフトウェアの利用も止めた。出退勤システムも校務支援システム上で運用することとした。
システム導入により、学籍や出欠など児童生徒に関する情報、保護者への連絡事項などを一元管理できるようになった。小学校から中学校までデータが引き継がれ、9年間を通した成績管理も可能だ。
導入の際は、各機能を一斉に使うと、教員の負担感も大きくなる。そこで年間の業務の流れに合わせて各機能の研修を実施。段階的に活用する機能を広げた。
校務支援システムの導入をきっかけに、今まで当たり前とされてきたやり方の見直しを学校にお願いしており、現在、ICT支援員が各校を巡回し、さらなる運用ルールの見直しとサポートを進めている。【講師】大町市教育委員会 学校教育課
【第65回教育委員会対象セミナー・名古屋:2020年2月13日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年3月2日号掲載