2月13日、名古屋市内で本セミナーを開催。教育委員会担当や教員が約100名来場した。
岡崎版「GIGAスクール構想」(詳細2面)を策定、推進している愛知県岡崎市では、これまで、iPadの整備を進めるとともに、岡崎市プログラミング学習を全市で実施している。学校情報係の川本氏が報告した。
岡崎市教育委員会は2017年から総務課内に、学校のICT化を進める学校情報係を設置。学校情報係は4人からなり、2人は機種選定や運用を進める指導主事、2人がネットワーク整備や保守・予算を行う行政職だ。学校情報係は、システム設計などは市長部局情報政策課と、ICTの活用については学校指導課と連携して進めている。
学校現場との連携では、現職研修委員会の中に学習情報部を設置。2人の指導員が市内の学校を巡回してICT活用について指導助言にあたっている。6人のICT支援員も所属。今後ICT支援員の人数を増やし、教員全体のスキルアップを高めていく。
岡崎市のICT教育の方針は、①ICTの活用による確かな学力の育成、②児童生徒の情報活用能力の育成、③教員のICT活用指導力の向上の3点だ。
今後は個別最適化学習など新しいキーワードにも対応するため、5~10年を見通した目標を見直す。
児童生徒用PCは段階的な整備を進めてきた。2018年度と2019年度で、小中学校全67校にiPadを整備。直感的で分かりやすい操作性や、豊富なアプリによる授業づくりのしやすさ、耐久性などでiPadに決めた。小学校に導入して1年半になるが、全市で故障したのは2台のみである。
校長にもiPadを配備。全校集会でiPadを使って説明するケースが増えている。校長会議のペーパーレス化に向けて、2019年9月から校長のiPadにPDFデータを送り、それを閲覧する形になった。
各校44台のiPadは、複数の児童生徒が使用する共用だ。フル稼働させるため、11台のユニット単位に分けて運用。教員が常にiPadで教材研究ができるよう職員室で管理している。休み時間には子供がiPadを借りに来ている。
共用の場合、自分が使っていたiPadが分からなくなる課題が発生する。そこで動物マークをiPadに貼って管理。また、予約台帳を用いて使用する日時やクラスを見える化し、見通しを立てやすくしている。過充電によるバッテリーの劣化を防ぐため、電源タイマーを用いて4~5時間で自動的にオフになるよう設定している。
iPadは、写真撮影や動画撮影、調べ学習など「INPUT」の活動、話し合い活動や探究活動、発表活動など「OUTPUT」の活動で活躍している。PC教室は不要ではと言われるが、集めた情報を作成・編集する場合、PC教室のデスクトップPCが活動の核となる。
2014年度に中学校にWindowsのタブレットPCを導入した際、72の指導案を作成し、年間カリキュラムを示したが、活用前提の授業も当時、見られた。授業づくりの中で、授業づくりの発想から、自然に使うことが重要と考え、iPadの導入につながった。
「岡崎市プログラミング学習」として、2019年度から市内すべての小学生が、教科主体のプログラミング学習に取り組んでいる。
岡崎市プログラミング学習の特徴は以下の3点だ。①「教科主体の独自カリキュラム」で1~6年の全学年で、発達段階や各教科の特性に合わせた24の授業モデルで構成、②学習指導案、ワークシート、教材プログラム、操作説明動画の4点セットですべての教員が見通しを持って指導、③全小学校で指導員訪問による研修を充実。ソフトやアプリを十分に用意
「教科主体の独自カリキュラム」では、教科に偏りが出ないよう、各教科にプログラミングの授業を振り分けた。小3社会や小5理科などプログラミングの授業を必ず行う必修12コマ、小2算数、小6音楽などプログラミングを推奨する授業を設定した。
全市的に行っている研修では、教務主任や情報主任を対象とした集合研修を始め、指導員が各校を巡回して指導助言を行っている。【講師】岡崎市教育委員会総務課学校情報係係長 川本祐二氏
【第65回教育委員会対象セミナー・名古屋:2020年2月13日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年3月2日号掲載