2月13日、名古屋市内で本セミナーを開催。教育委員会担当や教員が約100名来場した。
神奈川県相模原市では2017年度から、すべての小学校でプログラミングの授業を実施している。初年度は4年生、次の年は4・5年生、2019年度は4~6年生で実施。教科はいずれも算数だ。そのポイントを指導主事の渡邊氏が語った。
教員へのアンケートでは「自身のプログラミング教育への知識不足に課題を感じる」「教育課程上のどこに編成すれば良いのが分からない」という回答が見られた。プログラミング教育の授業が進まない理由として、教員が授業のイメージがわかないことがあげられる。自分が子供の時に授業を受けた経験がないため、授業のイメージを膨らませられる支援が必要だ。そこで1人の100歩より100人の1歩を目指そうと、相模原市では全校でプログラミングの授業を実施。2019年度は4~6年生、時期は2学期、教科は算数に絞ってプログラミングを進めた。
3年間で指導主事がすべての学校を訪問し、次の3つの内容を含む研修を実施した。①プログラミング教育全般についての理解、②プログラミング言語やプログラミング教育用の教材を活用するスキルの向上、③各教科などの時間におけるプログラミングの授業づくりのしかた
プログラミング教育のねらいは次の3点だ。①「プログラミング的思考」を育む、②プログラムの仕組み等の理解と問題解決へ活用する態度を育む、③各教科での学びをより確実なものとする。
相模原市では、特に①と②の育成を大事にしている。PCが自分たちの生活を支えているという認知を促し、問題解決に活用する子供たちを育てる授業を目指している。
プログラミング教育推進にあたり、小中学校の情報化推進計画として位置付け、各校でも学校教育計画に推進計画を作成。プログラミングやキーボード操作、デジタルカメラの撮影など、情報活用能力の育成について各校で計画を立てて進め、各計画を達成できたか、教育委員会に成果を提出することになっている。
相模原市では、プログラミング教育を進める上で、解決すべき課題を3つに定めた。1つめは、手引に示された資質・能力を目標としたモデルカリキュラムを作成すること。次に、授業力の向上のため、各教員の授業実践や教員研修、メンターの育成など。3つめが環境整備だ。教育委員会が学校に教材などを導入するとともに各校の予算で教材を導入。企業や大学と連携して提供を受ける場合もある。
各校からは様々な事例が報告されている。「マッチ棒で100段のピラミッドをつくる時、合計で何本必要か」という問題では、関係性を見いだし、プログラムで式を表すことで、関係性が正しいか確認した。
算数から始めたプログラミング教育だが、現在は他教科にも広がっている。社会科「食糧生産」で農業の機械化を学ぶ際にプログラミングで機械化を体験し、自分事として食糧生産の問題を考えた授業、社会科「災害につよいまちをつくろう」で、市の災害対策課から話を聞いた後、災害時に機械が行った方が良いことを実現するためモデルのプログラミングを行った。「コンピュータをツールとして活用すると有用な場面」は、技能の補助や認知の補助、表現の補助を行うこと。例えば、国語で児童が書いた「ものがたりのつづき」の文章を表現する際にアニメーションをプログラミングするなどだ。【講師】相模原市教育センター指導主事 渡邊茂一氏
【第65回教育委員会対象セミナー・名古屋:2020年2月13日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年3月2日号掲載