教育委員会や学校の整備担当者を対象にしている「教育委員会対象セミナーICT機器の整備と活用・研修」が、12月4日東京で開催された。次回は2月6日に福岡で、2月13日に名古屋で開催する。
佼成学園中学校・高等学校の上野裕之教諭は、従来の一斉学習ではなく、生徒自らが課題を見つけて進める探究型の授業実践に取り組んでいる。ICTにより、生徒にどのような資質・能力を身につけさせ、どのような関係を教員と生徒で築いていくかを語った。
本校は私立の中高一貫校で生徒数は約1000人。2015年に全教室に電子黒板を整備し、2016年から生徒が購入する形で1人1台のiPadを導入しており、デジタル教科書の活用や、アクティブ・ラーニング型の授業で活用するなど容量が不足してきたので、現在は128GBのiPadを使用している。
学校は、21世紀型能力を育成する教育活動が行えるように進化する必要がある。
入試でも、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」など学力の3要素が求められており、国立大は推薦・AO入試を30%に拡大される。一般入試も調査書や志望理由書・面接を重視するなど「主体的に学ぶ態度」が評価されるようになる。こうした資質・能力を育成するためにICTを効果的に活用していきたいと考えている。
教員の指導の引き出しを増やすというねらいもある。
本校では、Classi、ロイロノート・スクール、スタディサプリなどを活用している。ICTを活用する上でコミュニケーションを重視しているが、そのベースとなるのがClassiだ。
Classiの校内グループ機能を使い、教員と生徒が交流を図っている。毎朝の連絡とメッセージを学年の教員が輪番制で書き込むことで、直接関わりのない教員とも心のつながりが生まれる。
部活動や文化祭などのグループは生徒も書き込むことができ、生徒主体の運営を支援する。Classiならば個別トークルームで、授業の質問や学校生活・進路に関する相談など、いつでも連絡が取れる。
学習記録機能では、生徒は自分の学習状況を振り返っている。教員も生徒の学習状況を把握し、コメントを送ることができる。
ロイロノート・スクールは生徒からの意見を集約できるのが強みだ。問題演習や実験結果を共有するほか、グループディスカッションの際は、話し合いの結果を写真に撮って内容を共有するなど幅広く活用している。
英語のスピーキングテストでは中1から高3まで全生徒が、定期考査の一部としてロイロノート・スクールを活用している。
イヤホンマイクを使って録音した音声データを教員に送信。一斉に行えるので時間の短縮にもつながり、教員も録音したデータを繰り返し聞くことができる。
生徒主体の学びでは、生徒の学びの状況を確認する必要がある。そこでClassiのポートフォリオを活用し、その日のノートの写真をアップ。コメント欄には、学びで生じた「問い」を記入。教員は生徒の進み具合を確認するとともに、生徒の学びを深めるためのコメントを返していく。
日々の学びを蓄積し、生徒の変化や成長を可視化することで、生徒の自己肯定感にもつながっている。
夏休み中も課題研究の一環で各自がフィールドワークに取り組んでいる。
写真や分かったことをポートフォリオにアップすることで、教員は夏休み中でも生徒の活動を把握し、適宜助言を送ることができる。Googleフォームでアンケートを作成し、Classiに配信することで研究に必要なデータ収集を行う生徒も現れた。eポートフォリオや成績カルテ、学習記録などに蓄積されたデータを活用して、生徒主役の三者面談が行われている。生徒はiPadを使って、自分の学習状況を振り返り、教員や保護者に向けて説明している。
生徒は生まれた時から、ICTがある環境で育ってきた。教員はサポートにまわれば良い。ICTの導入により、生徒は成長し、教員の引き出しも増えた。それが学校の成長につながっている。【講師】佼成学園中学校・高等学校 教諭・上野裕之氏
【第63回教育委員会対象セミナー・東京:2019年12月4日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年2月3日号掲載