教育委員会や学校の整備担当者を対象にしている「教育委員会対象セミナーICT機器の整備と活用・研修」が、12月4日東京で開催された。次回は2月6日に福岡で、2月13日に名古屋で開催する。
1人1台のタブレット端末を活用している柏市立手賀東小学校の佐和伸明校長は、環境が整備されたことで、どのように学校が変わったのか、そして柏市の今後のプログラミング教育について報告した。企業の協力もあり、現在48人の児童に対して66台のタブレット端末を活用している。
本校は小規模特認校で、生徒数48名のうち10名程度は学区外から登校している。地域の特性を活かした豊かな体験活動や、少人数だからこそできるきめ細かい学習指導を行っており、さらにICTを活用して学力の向上を図った。
柏市学力・学習状況調査の結果を分析すると、本校では、正答率が高い「全体的に理解できている問題」、全体的に正答率が低い「全体のつまずき」、下位層の正答率が低い「個別のつまずき」に分けられる。
最初に着手したのは、「全体のつまずき」が見られる問題の正答率を上げることだ。そこで1人1台の端末で学力向上の実践モデルを目指した。
「全体のつまずき」が見られる問題は「思考力・表現力・判断力」が必要とされる問題であった。計算問題や漢字などは解けるが、考える問題になるとつまずきが見られる。そうした問題に焦点を当て、算数科のつまずきを解消することに取り組んだ。
学年ごとに、できない問題を確認し、つまずきに応じた授業改善を行う。PDCAサイクルではなく、RPDCAサイクルで授業を回す。徹底的にリサーチして、つまずいた問題を洗い出し、これを解決する手法として1人1台のタブレット端末を活用。再度、問題のチェックをし、改善が図られたか確認する。どのように取り組んだか評価し、個別学習の充実を図った。
そこでタブレットを利用した「問題作りによる協働学習」、「学習者用デジタル教材」、「プログラミング学習」などの授業パターンを示し、児童のつまずきに応じて、教員が選択できるようにした。
「問題作りによる協働学習」では、身の回りのものの面積について、タブレットPCを使い、児童が問題作りを行った。教科書など正方形や長方形のものを撮影し、タブレットで問題を作成。友達と問題を出し合うことで、対話的な学びが生まれるようにした。
「学習者用デジタル教材」を用いた授業では、直方体や立方体の展開図を考えた。
紙とハサミで展開図を作ると、時間がかかるため2~3パターンで終わってしまう。シミュレーター教材を使うことで、様々な展開図を考えることができ、思考パターンが広がった。
「プログラミング学習」では正方形の紙を三回折り、切って開いた形を考えた。この問題の正答率が低いのは、円を利用して正多角形を描くため。そこでプログラミングソフトを使って正多角形を描いていく。正三角形は60度でプログラムしても描けない理由を考え、回す角度である120度が正解であると発見し、それを応用して様々な正多角形を描いた。
本取組後、学力・学習状況調査で柏市平均の正答率と比較して大きく下回っていた5年生は、6年次には27䔈も正答率が高まった。
柏市は2017年度から市内全42小学校でプログラミング教育に取り組んでいる。小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類で示された「各学校の裁量により実施するもの」は2017年度に実施。「学習指導要領に例示されている単元などで実施するもの」は2018年度に実施している。2019年度は「学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科などの内容を指導する中で実施するもの」を実証研究で進めている。
プログラミング教育の課題は「プログラミング的思考」と「教科のねらい」の重なる部分を同時に扱える授業が少ないこと。柏市では、この2つが重なる実践事例を創出。現在、「柏市プログラミング教育 スタンダードカリキュラム」を作成中で、近くWeb版を公開する予定だ。【講師】柏市立手賀東小学校 校長・佐和伸明氏
【第63回教育委員会対象セミナー・東京:2019年12月4日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年2月3日号掲載