9月17日、第60回教育委員会対象セミナー「ICT機器の整備計画・校務情報化の推進」を東京都内で開催。関東地区を中心に全国から教育関係者が参集した。講師は、八千代市教育センター主任指導主事・黒飛雅樹氏、富士見市教育委員会教育政務課主査・馬場規雄氏、相模原市教育センター指導主事・渡邊茂一氏、宝仙学園小学校教諭・吉金佳能氏、さいたま市立大宮北高等学校メディア管理部・筒井賢司氏。
宝仙学園小学校(東京都)は、ICT機器の導入・活用に積極的に取り組んでいる。児童用タブレット端末も2015年度から理科の授業を中心に試行を開始。2019年度より、1人1台のセルラー端末(iPad)活用を3年生からスタート。理科を担当している吉金教諭が報告した。
早期からタブレット端末活用をスタート。「iPad活用ガイドライン」を策定し、ICT機器を活用した学びで目指す姿や、運用ルールをまとめた。保護者対象のICT体験会も実施して目指すべき姿を共有しながら進めている。
ICT機器をこれまでの授業にプラスすることで、学びの質が向上する。特に学びをアウトプットする段階で、ICTを活用することにより、表現の幅が広がり、多様な学び方が可能になり、質の高いインプットにつながった。
従来では実現が難しかったこと-︱「思考の可視化・共有化」「試行錯誤」などに取り組んでいる。低学年からの活用は、児童のトライ&エラーやフィードバックを、より効果的なものにする。
授業ではロイロノート・スクールやMetaMoJi ClassRoomなど様々なツールを活用。データは、端末でなく主にクラウド保存している。
理科では現在、「デジタルノートテイキング」に取り組んでいる。理科のノートをすべてデジタルで記録するというものだ。
デジタルノートにすると、紙のノートとは違うことが起こる。
まず、「板書の丸写し」がほぼ起こらない。児童は自ら写真や映像を撮影、選択してノートに配置し、ApplePencilを使って学びを記録・整理していく。まとめる過程や後で、友人のノートを端末上で見に行き、さらに自分のノートを更新するという姿も見られる。全員のノートがどんどん変わっていき、個性的になっていく。アクティブなノート作りは、アクティブな学びにつながる。
紙のノートは、教員対児童の1対1でとどまりがちだが、デジタルノートは、共有しやすく学びが広がりやすい。理科はグループワークが基本。共有しやすいデジタルノートはとても相性が良い。グループ学習では、4人で1ページのノートを作成することもできる。
卒業研究などのレポート作成でも、デジタルのメリットは大きい。紙の場合、計画、記録、下書き、清書など、すべて別の紙で行う必要があり、時間がかかる。デジタルはオールインワン、修正も容易なため、実験、試行錯誤の時間が増えて見た目・内容ともに質が上がった。
理科は週に2回しかないが、タブレット端末があると、学習がつながりやすいという面もある。また、子供たちの日常の発見が、メッセージ機能で毎日のように届く。子供たちの授業外の学びを授業へとつなげることもできる。
ICTを使うと、学びのサイクルをシームレスに回すことができ、探究型の学びには必須のツールであると感じている。
ICTは、社会との接続を容易にする。
プロジェクションマッピングに挑戦した際には、大阪の方とビデオチャットでつながってアドバイスを受けることができた。
今年からe-ラーニング「Monoxer(モノグサ)」(学習者の記憶度に応じてAIが問題を自動で生成)にも挑戦している。
今後も「ICTを味方につける力の育成」に取り組んでいく。【講師】宝仙学園小学校教諭・吉金佳能氏
【第60回教育委員会対象セミナー・東京開催:2019年9月17日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載