9月17日、第60回教育委員会対象セミナー「ICT機器の整備計画・校務情報化の推進」を東京都内で開催。関東地区を中心に全国から教育関係者が参集した。講師は、八千代市教育センター主任指導主事・黒飛雅樹氏、富士見市教育委員会教育政務課主査・馬場規雄氏、相模原市教育センター指導主事・渡邊茂一氏、宝仙学園小学校教諭・吉金佳能氏、さいたま市立大宮北高等学校メディア管理部・筒井賢司氏。
教員から行政職に異動して6年の黒飛氏はICT環境整備を担当した当初は、ICTには関心はあるもののそれほど詳しくはなかった。そこで、「自分が便利であると感じたものであれば学校教員に受け入れられるのではないか」と考え、整備内容の検討を開始。2018年度東日本最大規模ともいわれる整備内容となった八千代市(小学校22校、中学校11校)の整備の経緯を報告した。
八千代市の教育施策の重点目標は「教育を核とした持続可能な地域社会の構築」「子供たちの良さや可能性を引き出し伸ばす教育」だ。
小学校1年生から言語活動科を設け、イマージョン教育にも取り組んでおり、ユネスコスクールや子供サミット、教育サミットなどにも積極的に取り組んでいる。
八千代市では2018年度の機器更新で次の内容を整備した。▼大型提示装置の普通教室常設、特別教室用に1フロア1台・計約1340台 ▼学習者用PC小中学校共に4クラスに1クラス分相当・約5000台(教員用端末として併用。IDで振り分け) ▼学習者用PC用充電保管庫約150台 ▼普通教室・特別教室・体育館に無線LANアクセスポイント約680台 ▼学習者用ツール ▼校務用PC教員1人1台+α 約1100台
整備の際には、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインに配慮した運用ルールとした。
各教室でWeb会議システムも活用できる。ディスレクシアの児童が授業に参加しやすくなった。指導者用デジタル教科書は2020年度から小学校に、2021年度から中学校に主要教科を整備予定。授業支援ソフトやプログラミング教育、情報モラル教育を想定した教材も整備。学校HPシステムも更新した。
当初は予算確保について、財務課に理解を得ることが難しかった。
市役所業務は法律などの根拠をもとに動いている。そこで、学習指導要領が『法律』に基づいたものであること」がわかる資料を作成。教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインや障害者差別解消法に則った整備の必要性については理解を得ることができた。さらにサーバの寿命が間近に迫っていることもあり、八千代市の「総合計画」に位置付けることができた。
ここからが大変であった。「予算の月額平準化、競争性必須、契約期間追加費用なし」などの条件をクリアするために考えたのが「サービス調達」だ。
山梨県甲府市が『こうふDo計画』でサービス調達をしていることを参考に、八千代市でも教育版サービス調達を検討。実現したい教育内容をイラストも入れて分かりやすく示し、それに適した機器やサービスをラインナップする、という流れで企業から情報を得ながら調達書を作成し、マルチベンダーからのプロポーザル提案を実施。市教委管理職や現場代表・有識者で構成しワーキンググループで業者を選定した。
反省点としては、電力量の調査を繁忙期に設定して計測すべきだった点だ。実際に活用を進めてみると、電力不足気味であり、現在の課題となっている。また、タブレットPCの稼働時間は11時間とあったものの、活用が始まると昼過ぎには電池が切れるということもわかった。充電保管庫は廊下に設置しているため、教室では充電しにくい状況だ。また、教員用タブレットはやはりほしいという声もある。
これらの課題については洗い出して次につなげていきたい。【講師】八千代市教育センター主任指導主事・黒飛雅樹氏
【第60回教育委員会対象セミナー・東京開催:2019年9月17日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載