教育家庭新聞社では、平成28年度から私立公立高等学校IT活用セミナーを開催している。平成30年3月2日、CIVI研修センター新大阪東で私立公立高等学校IT活用セミナーを開催。教員や教育委員会が約80名集まった。本年はeポートフォリオの事例に関心が集まっていた。
高槻中学校・高等学校ではグローバルマインドを持った次世代リーダーの育成を目指し、必要な10の資質を設定してカリキュラムをデザイン。4年前から松下佳代教授(京都大学)の助言を受け、学力の3要素にメタ学習を加えた「4次元教育」を実践。前田教頭は「4次元教育」とそれを評価する仕組み「eポートフォリオ」について話した。
メタ学習は、客観的に自分の現状、次にすべきこと、自分にとって大切なことを把握して改善すること。このメタ学習の中心となる取組の1つが、学修インタビューだ。これは年度末に行う三者面談のことで、生徒は担任と保護者の前で、学んだことや自分の課題について電子黒板やプレゼンソフトを用いて発表する(5~7分)。面談ではそれを聞きながら、担任と保護者が質問。最後に担任が次年度へとつながるフィードバックをする。教員からの質問やフィードバックは生徒の内省を深めるように前向きな言葉がけを意識。こうした生徒への言葉がけは校内で共有し、言葉がけ例集も作成している。
生徒は学修インタビューにあたり、学校が作成した学修インタビュールーブリックの評価基準に従って、学習、生活、課外活動について自己評価と評価理由を記載。自分のPC(PCは入学時に購入)でプレゼン原稿を作る。自己評価は中1から高3まで毎年蓄積され、生徒自身が学びと成長を振り返る指標となる。
生徒は日常的に教科や行事、課外活動についてeポートフォリオに記録。学修インタビューでは各行事について記したeポートフォリオの中で特に印象深い学びや成長の糧になったと思うことを取り上げてショーケース化する。自分の学びの棚卸しは、自身による学びの再評価、更新につながる。こうした蓄積こそ、大学入試の提出資料として有効であると考えている。
学修インタビューは、ポートフォリオ評価、ルーブリック評価、パフォーマンス評価を掛け合わせている。保護者にeポートフォリオの意義を理解してもらう機会でもある。
当初、紙の手帳「Self-Management Planner」でポートフォリオを記録していたが、紙の手帳は重く、担任が決められた時間内に生徒全員のコメントを書くのも大変だ。そこで、授業支援ツール「Classi」のコメント欄を利用して平成29年度から徐々にデジタルに移行。
大学入試が変化して推薦入試が増え、担任が推薦状を出す事務作業はかなりの労になる。中学以降の学びについて大学から提出を求められる書類も多く、デジタル化は必須だ。
探求学習にも精力的に取り組み、探究の「論証モデル」や「評価ルーブリック」を作成。問題、主張・仮説、事実・データ、異なる観点、結論・提言など8枚のスライドを配り、そのスライドを埋めていく形で探求を進める。クラウド上で各生徒のデータを共有、誰がどこまで進んでいるかが分かる。探究のプロセスごとに生徒は自己評価や学習の振り返りをeポートフォリオに入力している。
生徒たちは、時代の枠組みが変わるから学ぶのではなく、新しい時代の枠組みそのものを作るために学ぶ、と考えている。【講師】高槻中学校・高等学校教頭/AL推進チームリーダー・前田秀樹氏
【第6回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2019年3月2日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年4月1日号掲載