教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー~ICT機器の整備と活用・研修」が、10月26日大阪で開催された。次回は12月5日に東京で、2月8日に福岡で開催する。
和歌山県では平成21年度に校務用PCを県立学校の教員に1人1台、約3000台を配備し、校務支援システムを2年間かけて開発。平成23年度から運用を開始し、その後中学校版や特別支援学校版を開発。現在、全県立学校で同じシステムを運用している。平成29年度には校務用PCを更新し、管理職と事務職はノートPC、教員は授業活用もできるように2in1タブレットPCとした。県立学校で校務支援システムの運用が成功したことから、小中学校にもこの流れを広げるため、共同調達を実施。今井氏は成功のポイントを報告した。
まず県内30市町村の現状を把握するため、アンケート調査を実施。校務支援システム導入済み6、未導入24、そのうち未検討が17であった。
未検討の理由は、必要性を感じない、専門的な知識がない、財政部局の理解を得られず予算確保できないなど。所属教員が作成した独自システムの運用で問題はないと感じている教育委員会もあった。
そこで、県内市町村教育委員会の意識改革から着手した。
平成29年5月、校務支援システムとは何か、どのようなメリットがあるのか、その活用事例などの勉強会を実施し、共同調達を提案。その後、県内全30市町村で構成する協議会を設置。事務局を県が担当し、市町村がシステム仕様の検討や選定を主体的に行うことで、市町村同士の協働意識や県との協力体制も生まれた。
複数の事業者からの提案を全市町村で審査し、導入システムを決定。協議会と事業者で協定を結び、その後、予算を確保できた市町村から順次事業者と契約を結ぶ。30市町村での共同調達により、定価の約半額程度のコストで協定を結ぶことができた。
共同調達後に再度アンケートを実施したところ、12の市町村が平成30年度にシステムを導入することが決定した。
共同調達成功のポイントは、3点だ。
1点目は、同じシステムを使うことで市町村間での異動時の負担が減る、単独で導入するよりもコストを抑えられるなど、全市町村でシステムを選定するメリットを理解してもらえた点だ。
2点目は、導入時期を限定しなかった点。
機能単位や学校単位での導入も可能とし、それぞれの市町村の状況に応じて導入できるようにした。
既に別のシステムを導入している自治体も次回更新時に乗り換えられるよう協定期間を5年間とした。
3点目は、県が事務局を担当した点。資料作成や会議運営などの面倒な業務は県が行い、市町村がシステム選定のみに注力できるようにした。
現在、各市町村からは出退勤時間管理機能を追加したいという声があり、来年春には基本機能として追加予定だ。
さらに、県全体での学習指導要録の電子原本化や中学校から高校へのシステム連携など、さらなる校務の効率化に向けた取組も検討中である。
今後もこの協議会で情報交換や協議を行い、県・市町村が協力し合い、教育の情報化、働き方改革を進めたい。
【講師】和歌山県教育委員会総務課教育政策班主事・今井健多氏
【第53回教育委員会対象セミナー・大阪:2018年10月26日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年12月3日号掲載