教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー~IT機器の整備と活用と管理・研修」が、8月9日京都で開催され、約80名の教育委員会や教職員が参集した。
千種高等学校は、全校生徒数105人、教員数15人の小規模校だ。学校のある宍粟(しそう)市千種町には、認定こども園、小学校、中学校が1校ずつある。同校の戎原進一教諭は、IPAセキュリティコンクールで文部科学大臣賞を受賞した生徒主体による情報モラル向上の取組について報告した。
千種高等学校の特色として、1クラスを①アクティブ類型、②ベーシック類型、③チャレンジ類型、の3類型に分けた少人数指導に取り組んでいる。アクティブ類型は体験学習を多く取り入れたもので、ゴルフやスキーの授業もある。ベーシック類型は、検定・資格、技術の習得に力を入れるコースで、進学・就職の両面を目指す。チャレンジ類型は、5教科の学習を重視し、国公立大学への進学に力を入れている。
こうした中、認定こども園、宍粟市立千種小学校、宍粟市立千種中学校、千種高等学校で交流授業、合同授業を行っていた。
千種高等学校のICT環境は、PC教室にPC41台、アクセスポイント3機、iPad5台。さらに平成30年度から3年間、兵庫県「高校における遠隔授業調査研究事業」の指定を受け、iPad51台が追加された。
情報モラル教育は5年前、生徒のある行動がきっかけで始まった。授業中、生徒が教員の授業をリアルタイムにTwitterに配信していることを知った校長から「何とかならないか」と相談があり生徒会に話したところ、「生徒会で情報モラル改善ルールを作る」ことになった。
生徒会がアンケートを作り、生徒に調査を実施。その内容を吟味・検討して、情報モラル改善ルールを作成し発表した。ルールは次の3つ。
①(学校でのルール)携帯電話、スマホは緊急時には必要なので学校への持込はOKだが、電源を切り使用しない、②(友達とのルール)自分の将来のことを考え、誤解を生むような発言をしない、③(家庭でのルール)利用料金や利用方法について家族で相談する。
生徒会が主体的にチェックしたこともありこのルールはかなり守られていて、生徒からは、「授業に集中できるようになった」「友だちと話す機会が増えた」などの反応がある一方、「スマホを使えず写真が撮れないので思い出が減る」「友だちと話すことがない」などの声も寄せられた。
認定こども園・小中高合同文化祭で情報モラル向上のための啓発劇も実施した。
生徒会はその後さらに取組を進め、まず地域の大人向けのスマホ教室、続いて教員向けのスマホ教室を開催。Twitterやメルカリのやり方を大人や教員に伝授した。
大人からは、「教えてもらえた方法で孫と連絡を取ってみよう」、教員からは「普段話さない生徒が、目を輝かせて堂々と説明していた」など生徒主体の取組に肯定的な反応が寄せられている。さらに、平成28年度からは小中高校生が合同で、大人・教員も参加して話し合うインターネット・サミットも開催している。
連携一貫教育が本校の文化。重視しているのは、教員と生徒が共に考えること。情報モラル向上が必要なのは、生徒だけでなく、大人を含めて全員である。一緒に楽しく取組んでいくことが大切だと考えている。
【講師】兵庫県立千種高等学校教諭 戎原進一氏
【第50回教育委員会対象セミナー・京都:2018年8月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載