教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー~IT機器の整備と活用と管理・研修」が、8月9日京都で開催され、約80名の教育委員会や教職員が参集した。
小学校43校、中学校21校、高等学校1校の奈良市。奈良県は文部科学省「教育の情報化実態調査」において、多くの項目で全国40位以下であり、奈良市の整備も国の基準を大きく下回る状況であった。整備が遅れると必要な予算は一層大きくなり、予算確保は、より困難になる。奈良市教育委員会事務局の谷氏はその解決に向けた取組について報告した。
現在、奈良市では5・6人に1台の児童生徒用端末と全教員へのPC配備及び普通教室における無線LAN環境の整備までが終わっており、教員が情報端末を使って提示したり、児童生徒がグループ学習などで情報端末を活用したりするなど日常的に何らかのICT活用が可能な環境になった。これらの整備は平成29年度予算によるものだ。
文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に準じたネットワーク環境も構築。
校務用ネットワークは専用ブラウザでインターネットに接続することとして論理的に分離。様々なスキルを持つ教員がいることを前提に、個人情報を保護できる仕組みとした。
これら整備のための予算確保が実現できたのは、平成27年度の組織改編の効果が大きい。これまで、それぞれ別組織で運営していた教育環境の整備や教育内容の指導、研修などに組織として一体的に取り組むことができるよう、学校教育課の中に情報教育係を設置。これにより「環境整備を着手するためのモデル校の整備と公開授業や教員研修、効果検証を元にした整備計画」のすべてにおいて、1つの組織でコミットできるようになった。
ICT環境整備の予算規模は大きいため、確実な効果検証が求められる。児童生徒の興味関心が高まる、成績が向上するなどの理由のみでは予算確保が困難であったことから、2年間にわたり学力調査やアンケートを実施。その結果を個別に丁寧に確認。例えば「成績は良いが算数は好きではない」と答えていた児童が「算数好きになり将来に役立つと考えるようになった」、「算数は好きだが成績が良くない児童の成績が上がった」などだ。予算確保の際は、これら望ましい変容があった割合が7割を超えていることがタブレット端末を活用した効果の1つとして説明した。
研修は中学校区単位で実施。同じ内容の研修を繰り返し行い、市内全教職員約1800人の全員受講を目指した。今後は、学校で研修を企画できるリーダー的な立場となる教員を育成していく。
統合型校務支援システムについての導入はこれから。奈良県が文部科学省の今年度事業に採択されたことを最後のチャンスと考え、奈良県及び県内市町村と取り組んでいる。現在は帳票の統一を進めているところだ。
【講師】奈良市教育委員会事務局 学校教育課情報教育係長・谷正友氏
【第50回教育委員会対象セミナー・京都:2018年8月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載