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教育ICT

正答主義の学習観が「深い学び」を妨げる<東海学園大学准教授・水野正朗氏>

2018年9月3日
第50回教育委員会対象セミナー・京都

教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー~IT機器の整備と活用と管理・研修」が、8月9日京都で開催され、約80名の教育委員会や教職員が参集した。

「授業のヤマ場」「揺さぶり」「練り上げ」を支援

東海学園大学准教授・水野正朗氏

東海学園大学准教授・水野正朗氏

現在東海学園大学で教育学系を担当している水野氏は、公立高等学校の教員時代からアクティブ・ラーニング(以下、AL)について研究を継続してきた。ALによる授業改善の視点を上手く取り込んだ授業として、中学校2年「エネルギー」の授業を紹介した。

「エネルギー」の授業では、「透明な円筒形の入れ物2つにBB弾を入れる。片方はバラバラ、片方はラップで固め、同じ質量にして斜面を転がした場合、どちらが速く転がるのか」を第一の課題として実験前に予測。生徒は既に位置エネルギーや熱エネルギーについて学習済だ。実験をしたところ、固まりのほうが、圧倒的に速く転がった。

では固まりのほうがなぜ速く転がるのか。生徒たちはグループで意見交換し、全体で討論した。

「バラバラなほうは音がする。位置エネルギーが音エネルギーに変わるため移動するスピードが遅くなるのでは」という考えが出た。その意見を聞いた他の生徒が「バラバラのほうも音や熱が出ない移動方法で両者を比較したい」と新しい課題を設定。縦に滑り落とす方法を考案して実験した。今度は両方が同じ速さで滑り落ちた。こうして「熱エネルギーや音エネルギーの発生によって位置エネルギーの一部が損失した」ことをほぼ全ての生徒が納得。8割以上が自己評価でAをつける授業になった。

評価表の尺度は「ひとりで考える、つなげて考える、深めて考える」の3段階、評価視点は「考えのつながり」「追究」「雰囲気」の3つである。「これまでに学んだ知識をもとに気づきや発見があった」という振り返りが多くあった。

ALとは、アメリカの大学教育改革の方策として1980年代に提起されて広がった学習論だ。一般的な定義は「一方的な講義を聴くという受け身の学習を乗り越えた、あらゆる能動的な学習のこと」である。ALは包括的な概念であり、何らかの能動的な学習活動がそこに含まれていれば、それはALである。

しかし文部科学省が進めたいALはこの理解では不十分だ。そこで学校教育が混乱しないよう、新学習指導要領では、ALという言葉が消え、「主体的・対話的で深い学び」となった。

では、「主体的」「対話的」で「深い」学びを成功させるためにはどうすればよいのか。

思考する機会、対話する機会を多く盛り込んではいるが、深さを追求できていない授業がある。「グループワーク(以下、GW)疲れ」をしている授業も見かける。表面的な「浅い」学びと「深い」学びの違いはどこから生じるのか。

京都大学の石井英真氏は、「教師が『正答主義の学習観』のままだと子供たちは物事に正答があると思い込み、自分の本音を表現することを諦め、正答が示されるのを待つようになる」としている。一見すると同じような授業過程でも、教員の学習観・授業観で学びの深さが変わる。

GWは「正答を当てる」ことが目的ではない。答えにたどり着くためには様々な道筋や考え方があることを体験し、法則を発見して納得し、次の切実な問いを見つけるためにGWを活用したい。そうすると授業満足度も高くなる。

「深い学び」を重視する実践はもともと日本の授業の伝統である。それは「授業のヤマ場」「揺さぶり」「練り上げ」などの言葉で表現されてきた。教員による適切なファシリテーションが今後、一層重要視される。

【講師】東海学園大学准教授・水野正朗氏

 

【第50回教育委員会対象セミナー・京都:2018年8月9日

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載

  1. 東海学園大学准教授・水野正朗氏
  2. 奈良市教育委員会事務局 学校教育課情報教育係長・谷正友氏
  3. 堺市教育委員会・主任指導主事・浦嘉太郎氏
  4. 京都市立御所東小学校教諭 藤川幸子氏
  5. 湖南市立甲西北中学校教諭 植西亮太氏
  6. 兵庫県立千種高等学校教諭 戎原進一氏
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