第5回(今年度第1回)私立公立高等学校IT活用セミナーを東京で7月27日に開催した。生徒用タブレットPCや大型提示機器の導入を予定している高等学校の教員など約80名が参集、活発な情報交換が行なわれた。
国語科教諭でありAppleが創設した教育者認定プログラムADE(Apple Distinguished Educator)に認定されている品田健教諭は「ICT機器の導入は教職員の働き方改革や授業改善につながるのか」をテーマに講演。その解答を「Yesである。しかし課題もある」と語った。前任校は、BYODの先駆でもある桜丘中学・高等学校(東京都)だ。
ADEの認定は、良い転機になった。ADEとして日本人は数十名が認定されており、定期的にAppleのテクノロジーを活用した実践の研修を受ける機会がある。Apple Pencilを使った漢文の授業事例など失敗事例も踏まえて紹介することで良い反響を得ることができた。
ICT機器を教員の働き方改革や授業改善に役立てるための最も大きな課題は「大人が壁を越えられるかどうか」にあると思う。
授業中に生徒がスマートフォンを出してイヤホンをしていると不安になるのが教員だ。その理由は、大人のスマホ利用が、動画やゲーム、SNS活用程度に留まっており、学びに使いきれていないからである。その壁を越えるともっと自由な活用ができる。
1学期が終わり、授業アンケートをワード等で作成してクラスごとに配布、それを回収・分析してまとめ、印刷する――このレベルのICT活用では、1学期の授業アンケートの結果を公表できるのは2学期。フィードバックには間に合わない。
しかし、Google suite for Educationのフォームを利用すれば、その場で集計、分析ができる。フォームは印刷不要、採点不要の小テストとして、「授業冒頭の小テストをスマホやタブレットで行う」ことができる。宿題プリントも、紙プリントでやりたい子、スマホ上で取り組みたい子双方に対応している。
タイピングが苦手であってもApple Pencilを使えば、手書きで作成できる。
出張先からでも教材をアップすることができ、教材や職員会議資料もGoogle Drive上で共有できる。
紙資料もPDF化して保存することで、自分で資料を保管する必要がなくなった。これは大きな省力化につながる。
校内限定のSNSには、新しい情報が届くと各教員に、プッシュ送信で「お知らせ」が届き、保健室からの連絡や教職員の遅刻・欠勤情報もすぐに把握できる。
本校の生徒は、スマホやタブレット、PCなどを選んでプレゼンを作成している。スマホ「も」使って良いというと、半数くらいの生徒がスマホを出す。画面が小さいため、提供できる情報がそぎ落とされ、良いプレゼンテーションになる。
生徒はスマホを使って、グループで単語テストに取り組むなどもしている。
これらの便利さを享受するためには、教員も生徒も、いつでもどこでもICTを活用できる環境であることが重要だ。
生徒の活用に関しては、自由に使わせることから始めるのが早い。教員は使いこなすことを考えるのではなく、良い教材を生徒に紹介できれば良い。
生徒は、挑戦しない教員には批判的だが、挑戦して失敗したことに対してはフォローしたり応援したりしてくれるという面がある。「先生が自分たちよりもテクノロジーを使える」とは考えていないからだ。
Pagesの最新バージョンでは、電子書籍も制作できるようになった。宿題や成果物の制作に活用できると考えているところだ。
【講師】聖徳学園中学・高等学校・学校改革本部長・品田健氏
【第5回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2018年7月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載