第5回(今年度第1回)私立公立高等学校IT活用セミナーを東京で7月27日に開催した。生徒用タブレットPCや大型提示機器の導入を予定している高等学校の教員など約80名が参集、活発な情報交換が行なわれた。
神奈川県立住吉高等学校は文部科学省「情報教育推進校(IE-School)」(平成28・29)及び神奈川県教育委員会「プログラミング教育研究推進校」(平成28~30)の指定校だ。教科「情報」を担当している山田教諭がその取組を報告した。
神奈川県の整備では3クラスに付き1台のAPと情報端末を配備。研究校としての追加整備もあり、同校にはLEGOマインドストーム35台、制御用情報端末(iPad)37台で取り組んでいる。
IEスクールのミッション「教科横断的な情報活用能力育成」に資するカリキュラム・マネジメント(C・M)を推進するため、ミドルリーダーを核にしたワーキンググループ(WG)を組織。教頭と各教科担当、ICT支援員など計17名の構成で教科連携を検討。最初の壁は「情報活用能力の理解」であった。
情報活用能力は「どの教科でも育成しているはずだが意識化できていない」点を課題とし、ワールドカフェ方式で「今の生徒に何が必要な力か」を調べ、話し合いながら「共通理解」することからスタート。文部科学省の成果物も活用しながら「資質・能力」「思考力・判断力」「学びに向かう力」について教員自身の理解を深めた。プログラミング的思考を「意図通りに動かすために論理的に順序良く考えること」であるとし、細分化(問題を細かくして考える力)、類型化(物事の類似点を見つける力)、抽象化(物事を抽象的に捉える力)、手順化(物事を処理する順序を考えるか)に分類。これらを各教科に落とし込み、例えば英語の長文読解で「細分化」、歴史で「類型化」、生物の分類で「抽象化」、数学で「手順化」などを身に付けることができているのではないかという視点で意識化を図っている。
1年次必修の教科「情報の科学」ではアルゴリズムやコンピュータプログラミング(ビジュアル系、コード系)を活用した問題解決学習、組み立てロボットのプログラミングによる問題解決、モデル化とシミュレーションなどを実施。無料オンラインアプリ「ブロッキーゲーム」で感覚的に順次処理を体験し、アルゴリズム体験ゲーム「アルゴロジック」(JEITA)で意識化を図った。
今年はマクロ言語に取り組んでいる。教科書の例題を基に「自動販売機」の仕組みをエクセル上でプログラミング。普段自分が対峙している機械とのやりとりの手順化は実感しやすく、ここまでたどり着けたのか、と思うような作品もあった。
レゴマインドストームでは災害救助をテーマに「センサーで障害物を避けながら倒れている人の場所までたどり着く」ライントレースでプログラミングした。
1・2年生の「総合的な学習の時間」では講演会でプログラミング的思考についてイメージをつかんだ後、プログラミング的思考を活かした探究活動を展開。プログラミング研究部でも日常的な研究活動や学校祭での一般公開、コンテストへの挑戦などを行っている。
年間2回の「生徒による授業評価」では本校独自の評価項目を取り入れて分析。
個々の評価結果を、IEスクールWGや教科会等にて集約して分析。P=年間指導計画、D=授業実践、C=授業評価、A=教科会等による改善方策の策定――により、授業改善や次年度の年間指導計画に反映して生徒の情報活用能力を、全教育活動において育んでいる。
【講師】神奈川県立住吉高等学校・山田恭弘教諭
【第5回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2018年7月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載