第5回(今年度第1回)私立公立高等学校IT活用セミナーを東京で7月27日に開催した。生徒用タブレットPCや大型提示機器の導入を予定している高等学校の教員など約80名が参集、活発な情報交換が行なわれた。
中学校開校に伴い生徒用情報端末(iPad)の1人1台活用推進の中心となった河野教諭が、これまでの取組を報告。「分からないことだらけの中、苦労しながらの7年間であった」と語る。
創立38年の西武台高等学校は、全校生徒約1500人、教員約100人。対して中学校は創立7年で全校生徒約100人、教員18人の新しい学校だ。
中学校では創立当初から1人1台情報端末を家庭で購入して3年間の分割払いで運用。各教室にはプラズマテレビを提示機器として設置。校内無線LANも整備した。
西武台アクティブラーニング・ラボ(SACLA)は、有識者にアドバイスを得て構築。グループ学習やディスカッションなど、多彩な授業形態に対応できるように勾玉型の可動式デスクや大型スクリーンを設置。ICTを活用したアクティブ・ラーニング(A・L)に取り組んでいる。
ICT活用の経験が浅い教員ほど「ICTを使わなければ」と考えがち。使うと効果的なところはどこか、を考えることが重要であると繰り返し伝えることが最初の一歩。本校では授業を「インプット」「トランスフォーム」「アウトプット」に分け、インプットとアウトプットで主にICTを、「トランスフォーム」ではSACLAを積極的に活用することを当面の目標とした。情報端末はiPadとし、Keynote(プレゼンツール)とPages(文書作成ツール)、iMovie(動画編集ツール)、Numbers(表計算ツール)を活用。無料なので気軽に活用できる。
総合的な学習の時間にはチャレンジ学習に挑戦。身近なところから課題を発見し、解決に向けて調査・実行、評価する。調べただけで終わるのではなく今後につながる「良い失敗」をたくさん経験できるように、「行動」につなげる点をマストにしている。
中学校1年生は学校内でチャレンジ。5期生は、学年カラーが緑だったこともあり「学校を緑でたくさんにする」ことにチャレンジ。当初は植木鉢で植物を育てるなどしていたが、理科教員のアドバイスを得て肥料作りに着目した班や、水やりに挫折して廊下に植木鉢を設置して水やりをみんなで行う仕組み作りを考えた班などがあった。収穫祭では家庭科と連携して料理づくりに発展。プレゼンにまとめて発表した。
6期生はオリジナルスクールガイドの作成にチャレンジ。自分たちだからこそ次年度の新入生に伝えられることがある、と考え、後輩が学校に早く慣れるための活動を各班で考えて取り組んだ。
中学校3年生は海外を舞台にチャレンジ学習。オーストラリアの修学旅行前に現地の人とスカイプで交流。日本のゲームに興味がある人が多いという調査結果から、ゲームセンターに出かけて取材、紹介ビデオを作成した。取材交渉も生徒自ら行った。
次の段階は、これら「総合」の取組を各教科に広げること。社会科では、生徒の疑問から始める課題解決学習で資料集めやディベートを展開してICTも活用。生徒の疑問から授業を始めることで主体的な活動につながりやすい点は各教科でも同様だ。
授業冒頭では「フラッシュ型学習」を行っている。これは英語や漢文、朗読など一斉に声を出して行うもの。大量の問題を解くこともあり、ALの準備につながっている。
保護者にはメールなどで直接、連絡事項を配信。ICT活用は大きな効果があると感じているところだ。本年は2学期からEポートフォリオの取組にも着手する予定で準備中。これは生徒自ら行うプランニング作りで、当初はアナログからスタートする。
高等学校は、全国で最もICT活用が遅れていたといっても過言ではない。生徒数が多く年配教員が多いこともあり、40年続いている仕組みを変える難しさがあった。これを変えるきっかけになったのが、大学入試改革だ。これで流れが一気に変わり、高等学校校舎にも昨年度から無線LAN、教員用PC、校務・授業支援システム等を配備。高校1年生はChromebookの購入を必須とした。
全員購入とするのか、一部コースのみとするのか、BYODとするのかが議論の争点となったが、「一気に変えなければ全体が変わらない」こと、学校の認めた端末とすることで管理運用ルールをハンドリングしやすいと考えた。
校務支援システムは、今ではベテラン教員も活用。今年度秋からは、電子黒板の導入にチャレンジする。
【講師】西武台新座中学校・西武台高等学校・河野芳人教諭
【第5回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2018年7月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載