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教育ICT

深い学びのイメージ5タイプに分類可能<國學院大學・田村学教授>

2018年5月7日
第48回教育委員会対象セミナー・金沢

3月24日、金沢市の金沢商工会議所で第48回教育委員会対象セミナーが開催された。5人の講師による講演の内容を紹介する。次回の第49回教育委員会対象セミナーは、7月5日に東京都墨田区のKFCホールで開催される。

鍵は「つなぐ・つながる・つなげる」

國學院大學・田村学教授

國學院大學・田村学教授

國學院大學教授で文部科学省視学委員の田村学氏は、新学習指導要領の特に深い学びの内容を中心に講演した。新学習指導要領の主体的・対話的で深い学びのうち、イメージしにくいのが深い学び。これを大きく5つに分類して、それぞれの事例を紹介した。

深い学びは知識・技能が関連づいて、構造化されたり身体化されたりしてより高度なものになり、駆動する動的なイメージ。紹介した事例を5つに整理すると、1つ目は様々な情報がつながり合うタイプで①~③の事例。2つ目は中心となる概念のあるタイプで④の事例。3つ目はパターン化するタイプで⑤⑥の事例。4つ目は場面が変わっても知識と結びつくタイプで⑦⑧番目の事例。5つ目は知識が目的や価値、手応えとつながるタイプで⑨⑩の2事例になる。資質・能力の3つの柱に当てはめると、1つ目から3つ目が「知識・技能」、4つ目が「思考力・判断力・表現力等」、5つ目が「学びに向かう力、人間性等」になる。これらを活用して、子供たちの何がどうなったことを「深い」とするのかを考えてほしい。

①探究的な学びを平和学習で行った小学校では、話を聞いたり調べたりして劇を作り始めた。子供たちが、あるセリフが一番大事だと言ったので、教員がなぜ大事かを問い、グループの話し合いが始まった。主体的な場面が対話的になった。結果、発話の質が上がり、最初の自分の考えに他の子供たちからの新たな情報が入ることで、新しい考えができた。②生物の進化についての中学校授業。生物学的にヒトに最も近いのはチンパンジー、ゴリラ、オランウータンのどれかという問いを、頭蓋骨の特徴、脳の全体重に占める重さの割合、遺伝子・染色体等のデータから考えた。子供たちに授業の振り返りを聞くと、「学んだことの関係に気付くことができた。それが深い理解。すっきりした」と答えた。

③小学校低学年では、様々な仕事を見て学んだ児童が発表し合うと、ある児童がどんな仕事にも似ていることが2つあると言った。1つは大変ということ。もう1つは誰かのためにすることだった。
深い学びを考える際のキーワードは、「つなぐ・つながる・つなげる」。個別の知識が徐々につながり、より高次の知識や概念を獲得する。

④家庭科の冬の衣服の着方では「空気の層」が大事で、断熱効果があるため、たくさんあると温かくなる。まず空気の層の概念を理解した後に様々な事実がつながった方が、子供たちの概念が確実に高まる。最初に中心となる知識や概念があり、ここにピースがつながっていくタイプだ。

⑤柔道の内股の授業。ポイントは腕の使い方、足の使い方、間合いの取り方、踏み込み方の4つ。生徒はこれらがつながり、一体となって内股という技になることに気づいた。⑥小学校のリコーダーの授業。お腹に力を入れること、指の使い方、タンギングの方法等、細かい技能が一体となっていい演奏が生まれる。これらは個別の知識が一本の線でつながるようなイメージで、パターン化するタイプ。

⑦中学校の国語。自分の意見を説明するために、単元で学んできた3つの論述方法のどれを使うか考える授業。ある生徒は話し合いの後に方法を変えた。授業で知識を学んだだけではなく、同じ単元の別の授業にも「つなぐ・つながる・つなげる」ことができた。⑧中学校の柔道の支え釣り込み足の授業。サッカーや野球では軸足、重心が大事。柔道でも同じではないかと考えた。これが汎用的ということだ。思考力・判断力・表現力は、知識や技能が異なる場面や状況でつながっていく。未知の状況でも使えることになる。

⑨小学校の総合的な学習の時間。外来生物のヒアリの調査をしても学区内で発見できなかった。児童は初め大発見になるからと再調査を希望したが、話し合ううちに、いないことが大事だ、地域を守ることになるという意見が出た。功名心が公共のためというより高い目的と結びついた。知識・技能が目的や価値とつながった。手応えにつながると安定・持続する。これが学びを人生や社会に生かすことだ。

⑩中学校の数学の相似の授業後に、その知識を活かして体育館の壁の高さを測った。生徒は「学んだことが様々な場面で使える。話し合って他の人の考えを活かし解決するのが楽しい」と言った。

【講師】國學院大學・田村学教授

 

【第48回教育委員会対象セミナー・金沢:2018年3月24日

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年5月7日号掲載

  1. 國學院大學・田村学教授
  2. 加賀市教育委員会学校指導課・可部谷孝嗣指導主事
  3. 大阪市教育委員会事務局・山本圭作課長代理
  4. 富山県立砺波高等学校・東海直樹教諭
  5. 星稜中学高等学校・濱野加代子教諭
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